解体されることが決まったデゴイチ=鳥取県大山町のJR大山口駅前(大山町提供) [ 拡大 ]
鳥取県大山町が、JR大山口駅前で展示しているD51形蒸気機関車(デゴイチ)の年内解体を決めた。「本州を最後に走ったSL」という“歴史遺産”なのだが、財政難に加え、1500万円以上かかるという膨大な輸送費がネックとなり、譲渡先も決まらなかった。保存がままならなかった背景には町のずさんな管理も指摘されている。
このデゴイチは1941年の製造で、75年に鳥取・米子−島根・益田間を本州最後のSL列車「石州号」として走った620号機。76年に町が国鉄から無償で譲り受けた。
3年に一度ほどのペースで塗装やさび落としなどの補修を行っていたが、町の担当者は「回を重ねるごとに費用が増加し、財政を圧迫するようになったため、今年度予算は修繕費約230万円を計上しなかった」と説明する。
今年8月から譲渡先をホームページで公募したところ、県内の若桜(わかさ)町や大阪、埼玉などの企業、個人、自治体から9件の申し込みがあった。ところが大山町が試算したところ、隣接する米子市までの約20キロの運搬費だけで約1500万円かかることが分かった。
「車両は日本海からの潮風により腐食が進み、クレーン車でそのままつり上げたら、文字通り崩壊する。輸送前に解体し、新たな展示場所で改めて組み立てる手間を考えて、1500万円という見積もりを出した。輸送距離が長くなれば、それ以上の負担になる」と担当者。これを聞いた譲渡希望者は「とても、そこまで負担できない」と、いずれも辞退してしまった。
鉄道アナリストの川島令三氏は「鉄道車両を保存する際は屋根や遮蔽(しゃへい)物を設けて雨風から守るべきで、毎年のメンテナンスが欠かせない」と指摘する。
だが、このデゴイチは屋外で雨ざらし、吹きさらしの状態。鎖と植え込みで囲ってはいるものの、車体に触れられる状態で置かれており、川島氏は「保存状態が極めて悪く、補修も3年に一度では不十分。これでは、本州最後のSLという歴史的価値もゼロになってしまう」と手厳しい。
町の担当者も「厳重な管理とはいえない」と認め、「30年以上前に譲り受けたころから、防風などの発想がなかったのかも。いまさら屋根を設置しても焼け石に水のような状態ですし…」と話す。
ずさんな管理が“寿命”を縮めたともいえそう。ファンからは「維持費を出すから保存して」との声も寄せられているが、年内解体の方針に変更はないという。