年金問題で国民の老後への不安が増大。変額年金保険が人気となっているが… [ 拡大 ]
老後の生活資金として人気となっている変額年金保険。その人気とは裏腹に、変額年金事業から撤退する生命保険会社が相次いでいる。英国の作家、アガサ・クリスティの推理小説「そして誰もいなくなった」を地で行くような展開の裏には何があるのか−。
変額年金保険とは、運用実績によってもらえる年金額が変わる商品。一般的に払い込んだ保険料相当額は保証される。老後に不安を感じる人たちの間で人気だが、商品の提供を中止する生保が相次いでいる。
三井生命保険が今年4月以降、新規販売を停止したのをはじめ、ハートフォード生命、アイエヌジー生命、住友生命など大手が次々と変額年金の主力商品を販売停止にしている。
第一フロンティア生命も今秋、販売を事実上休止し、残された変額年金の主要プレーヤーは損害保険系の生保やマニュライフ生命など数社だけという状況だ。
撤退の主な原因には、株価が急落した場合の顧客に対する元本保証費用などが拡大しすぎて、負担しきれなくなったことがある。生保各社は変額年金を売れば売るほどリスクを抱え、それに対応する責任準備金を積まなければならないため、結果として販売を停止せざるを得なくなったのである。
リスク計測の専門家であるアクチュアリー(保険数理士)の1人は「変額年金保険はビジネスモデルに根本的な問題があった」と指摘する。
「変額年金は保険商品であると同時に、投資商品としての性質も持ち、市場動向の影響を強く受ける。各社とも市場が変動するリスクへの備えが不十分だった」(同)
また、外資系、国内系が入り乱れた激しい販売競争も背景にある。シェアを高める代償として、代理店である銀行に支払う手数料や顧客への手厚い保証などで厳しい条件を強いられた面も否定できない。
販売を増やすために積み重ねたリスク管理面での無理が、金融危機を契機に噴出した格好だ。ある生保の商品開発担当者からは「商品は売ってなんぼ。『こういう商品を出してくれ』『こんな商品では売れない』といわれると、それに従わざるを得ない」との声も。
一方で、変額年金に対する顧客のニーズは根強い。昨年秋のリーマン・ショックで落ち込んだ変額年金の販売は、株式市場の安定とともに戻りつつある。生命保険協会が公表している生保事業概況によると、2009年4〜6月期の変額年金保険の新契約件数(45社の合計)は前年同期比6.6%の増加。7〜9月期も同じように増加傾向だったようだ。
生保関係者は「日経平均株価が1万6000円になれば、(変額年金保険の)問題は解決するのだが…」と嘆く。しかしその日がいつ来て、さらにいつまでその株価水準を保てるかは誰にも見通せない。
顧客のニーズと販売代理店である銀行の利益、そして生保の経営という3つを成り立たせるのは容易なことではない。