■あす徳島「勝浦座」と共演
200年余りの歴史がある大阪府能勢町の「能勢の浄瑠璃(じょうるり)」の特色ある継承システムが、改めて注目されている。家元制度と違い、世襲にとらわれずに各流派が自由に弟子を育てる「おやじ制度」により、国の無形民俗文化財に選ばれて10年たった今も、安定的に伝統を守ってきた。“おやじ衆”は、日本を代表する人形座との人形浄瑠璃ジョイント公演を8日に控え、けいこに余念がない。
伝統芸能は世襲を原則として実子や養子が跡を継ぐ家元制が主流。しかし能勢の浄瑠璃は、家元の役割を担う各派の「おやじ」が、世襲にとらわれず、数人の弟子を育てる仕組みだ。
現在のおやじ4人を指導してきた郷土芸能保存会相談役の山森高是さん(73)は「おやじ制度があったからこそ、200年にわたり安定的に継承できている」と強調する。おやじには後継者を養成する義務があるため、町内の若者らを積極的に勧誘することで、浄瑠璃人口の拡大にも役立っているという。おやじは2〜3年で交代するが、年功序列ではなく貢献度に応じて後継が決まる。
町の男性人口は約6千人だが、保存会の会員は220人に上る。最も多かった時期の6割に減っているが、おやじの一人、岡田博司さん(71)は「昔のおやじは、実の息子よりも弟子をかわいがるほどだった。代々、浄瑠璃を語れるのが能勢の男のステータス」と、継承に自信を見せる。
浄瑠璃の魅力について、山森さんは「人間の義理人情が最もよく表れる。最初は難しい語りでも、みな次第にのめりこんでいく」という。
8日には、能勢町内の浄るりシアターで、国の重要無形民俗文化財に指定されている徳島県の「勝浦座」と共演する人形浄瑠璃のジョイント公演を行う。実行委員長の岡田さんは「浄瑠璃は情がないと語れない。これからも保存していきたい」と話している。
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【用語解説】能勢の浄瑠璃
江戸時代後期の文化年間に、大坂で義太夫節を聞き覚えて帰ってきた村人が酒席で披露したのが始まりとされる。太夫(語り手)と三味線だけの素浄瑠璃。文太夫派と井筒太夫派、中美太夫派、東寿太夫派の4派が受け継がれている。平成5年に大阪府の指定無形民俗文化財となり、11年には国の無形民俗文化財に選ばれた。