従業員45万人、総資産305兆円、経常利益8305億円(いずれも平成21年3月期)と日本最大規模の株式会社が経営陣を一新して始動した。社長と2人の副社長に加え、役員18人のうち5人が官僚OBという布陣は、日本郵政が「民営化による効率化」の経営方針を転換して、官僚OB主導で「公益」を重視した“官流”改革に踏み出すことを意味する。
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斎藤次郎社長は28日の就任記者会見で、「郵政は明治初年に前島密(ひそか)が立ち上げて以来、国営事業として職員が誇りを持って国民のために奉仕してきた」と述べ、公共事業体への方針転換を「宣言」した。
しかし、公益事業は効率経営とは相いれない。「一体的なサービスによって、コスト低下はできる」と斎藤社長は自信を示す。しかし、20日に閣議決定された郵政改革の基本方針に明記された郵便、貯金、簡易保険の3事業一体サービスや全国一律サービスを維持するにはコスト増は避けられない。「経営効率化を維持しながら(民営化路線で生じた)サービス低下や職員の士気低下」の改善も急務となる。
役員が2倍に膨らんだ経営体制からは株式会社としての効率追求の姿勢はまだ見て取ることはできない。基本方針に盛り込まれた全国2万4千の郵便局ネットワークを地域の行政サービス拠点として活用する構想は売りの一つだが、実現までには多大な労力とコストを要する。「公益」を掲げながら巨大郵政の経営効率化にどこまで大なたを振るえるか、斎藤社長の手腕にはいやでも注目が集まる。
官業色を強める日本郵政の最大の懸念は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険を通じて集まる300兆円もの金融資産の行方だ。民営化によって民間に流れることで景気回復や経済活性化の起爆剤としての役割が期待されていた金融資金が、官に逆流すれば事実上の財政投融資の復活につながりかねない。
民営化による経済活性化が進まなければ「最終的に国民負担が増える」(竹中平蔵元総務相)とみるエコノミストは少なくない。日本郵政の資金運用先の8割が国債という現状について、斎藤社長は「国民から預かったお金を民間に充てるという基本方針を揺るがしてはいけない」と述べたものの、具体策は示さなかった。大きく複雑な難題をどう解いてみせるか、斎藤体制の試金石となりそうだ。