「証拠の数が非常に少なかったので、推測するしかない部分があった。そこをどう判断するかで悩んだ」。地裁立川支部で開かれた初の裁判員裁判。判決後の会見で男性裁判員(49)はこう語り、裁判員裁判の難しさを指摘した。
裁判員の負担軽減のため、裁判員裁判には「迅速さ」と「分かりやすさ」が求められ、事前の公判前整理手続きで争点を絞り込むとともに、証拠も厳選される。今回の裁判では、弁護側も提出予定だった証拠を11個から4個まで絞り、被告の妻が被害者の女性にあてた謝罪文は証拠提出せず、冒頭陳述や弁論に盛り込むだけにした。
会見で男性裁判員は「裁判官は『証拠はそろっている』と言ったが、素人から見ると少ない」と感想を述べた。50代の女性裁判員も「分からないまま終わった部分はある」。人の運命を左右する判断だけに、事実関係をもっと深く知りたかったという声が出た。
一方、検察側は「証拠は過不足なく出した」とした上で、そうした裁判員の声について「今後、検討しなければならないところ」としている。
今年1月に行われた模擬裁判の公判前整理手続きでは、最高裁が「有益な証拠まで切り捨てる事態があった」と指摘したケースもあった。
裁判員制度の導入にかかわった四宮啓(さとる)弁護士は「証拠を見ていないので分からないが、審理の迅速化自体が目的になったり、裁判員が『やり残した』と思う部分があったりするのはよくない。充実した審理のためには審理時間の延長があってもいい」と話している。