前原誠司国土交通相が29日、企業再生支援機構の活用を表明した日本航空の再建は、同相直属の専門家チーム「JAL再生タスクフォース」がまとめた計画が事実上、白紙となり、機構主導で仕切り直される。専門家チームと日航の取引先銀行団に修復不能の亀裂が生じたうえ政府の方針もぶれ続けた。ダイエーや旧カネボウを手がけた旧産業再生機構のメンバーが名を連ね、鳴り物入りで専門家チームが発足してから1カ月。司令塔不在の日航再建は迷走に迷走を重ねた。
◇
「JAL再生へ、ぜひ債権放棄に同意願いたい」
「再建計画が示されなければ預金者や株主に説明できない。今回も数字の根拠が抜けたままじゃないか」
今月20日、東京・天王洲にある日本航空本社の最上階。東京湾を眼下に望む25階の特別会議室で専門家チームのスタッフと日本政策投資、みずほコーポレート、三菱東京UFJ、三井住友の4行の担当者が向き合っていた。
専門家チームは13日の初会合で銀行団に3千億円の債権放棄を口頭で打診。18日の前回会合で正式に要請したが、銀行団は唐突で一方的な要請に猛反発した。すると、専門家チームは20日の会合でいきなり2500億円に減額してきた。「額も内容もころころ変わり、肝心の根拠と道筋は示されない。この案件はめちゃくちゃだ」。取引先銀行幹部はかえって不信を募らせた。
銀行団が最後まで疑問視したのは、債権放棄など多額の金融支援の妥当性と、専門家チーム主導による再建の実現性だ。再建の最大のネックである年金債務の削減についても、「誰がどのように解決するのか道筋が示されていなかった」という。
専門家チームには、冨山和彦氏、高木新二郎氏ら旧産業再生機構の幹部が並び、実動部隊にも出身者が参加した。再生機構は政府の全面的なバックアップを受け、法的権限もあったが、専門家チームは国交相の私的機関でしかない。
内部でも再建手法で意見が割れた。高木氏は「金融機関と企業の自助努力を迫るべきだ」と、私的整理の一種である「事業再生ADR」と日本政策投資銀行による危機対応融資の併用を主張したという。これに対し、冨山氏は企業再生支援機構の活用を主張した。支援機構には1兆6千億円の公的資金枠があり、日航への出融資や金融機関からの債権買い取りなど、政府が強力に関与し再建を主導することができるためだ。冨山氏は自らが支援機構に乗り込み、日航再建を主導する意向だったという。だが、こうした強硬な姿勢は、銀行団のみならず支援機構の反発も招いた。
この間、政府の方針も揺れた。前原国交相は当初、「企業再生がどういうものか理解していなかった」(政府筋)という。藤井裕久財務相は、公的資金投入に理解を求めた前原氏に激怒したとされる。財務省幹部は「再建後の将来像を示さず、企業年金の処理も不透明では公的資金など出せない」と突き放す。
この1カ月の迷走は、関係者に仕切り直しとなる日航再生の困難さを改めて思い知らせることになった。