■幼い憧れ…映画とのコラボで初挑戦
「太宰(治)さんと芥川(龍之介)さんはオレのスーパースターで、子供のころからの憧(あこが)れでした。音楽でいえば(ローリング)ストーンズみたいなね」
還暦を迎えた今年、生誕100年の太宰が舞い降りた。
「太宰さんは女々しい、弱々しい、だらしねぇおっさんだとか、哀(かな)しいとかね、そういうイメージ。芥川さんのほうがよかったんだけど、年とともに変わってきましたね」
「ヴィヨンの妻」など太宰治の短編数本を原作とした公開中の映画「ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜」に、料理屋の主人役で出演した。そして撮影後、映画とのコラボという初の試みで新潮社が制作したオーディオブック『ヴィヨンの妻』で朗読に挑戦。「ヴィヨンの妻」全文を読み切った。収録時間約70分。
「一人で(登場人物)全員やらしていただいて、こんなありがたいことはない。(主人公の)佐知が物語の情景を語っていくのを、どこまで女がしゃべっているように聞かせるべきなのか、最初は迷いましたが、あまりそういうの意識しないでと思ったとたん、楽になりましたね」
屈指の声の良さ。声優やナレーターとしても実績十分。なのに朗読の作品化に携わるのは今回が初めてという。ホントですかと尋ねたら…。
「実は中学生のとき、おじいちゃんから初めて高いものをもらったのがテープレコーダー。オープンリールのね。普通、男の子って楽器とか、そっちに走るけど、それこそ芥川さんや太宰さんの文章を読んでテープに吹き込んでいた。朗読は好きだったんだと思う。自分の声を吹き込もうって発想すごいでしょ?」
この“発想”が後に一世を風靡(ふうび)する「スネークマンショー」などで開花したのかも。朗読も病みつきになる?
「太宰さんやって芥川さんやらないと、オレのなかでは気がすまないっていうのがある。短いの(短編)がいっぱいあるからね」(新潮CD・2100円)
山根聡
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【プロフィル】伊武雅刀
いぶ・まさとう 昭和24年、東京都生まれ。俳優、声優、ナレーター。映画、ドラマ、CDなど多方面で活躍。「なぜか最近は警察関係の役が多いですね(笑)」