日銀が社債とCP(コマーシャル・ペーパー)の買い取りを打ち切る方針を表明し、リーマン・ショック以降の「異例の措置」(白川方明総裁)からの脱却に、一歩踏み出した。だが、物価の下落は止まらず、景気の「二番底」懸念はぬぐえない。新政権の経済政策運営の混乱も加われば、「出口戦略」が遠のく可能性も出てくる。
「所期の目的は十分達した」。決定会合後の会見で白川総裁は胸を張った。
輸出や生産の持ち直しを受け、企業業績は回復基調にある。大企業の資金調達手段であるCPや社債市場も改善している。日銀のCP買い入れでも最近は応札ゼロが続くなど、もはや日銀が出る幕ではないというわけだ。
だが、第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「そもそも社債やCPの買い入れへのニーズは乏しかった。これをもって出口戦略を語れる状況ではない」とくぎを刺す。
日銀は、金融機関へ3カ月の超低利資金を貸し出す特別オペは延長した。「ある日突然発表すると、市場に混乱が生じる」(白川総裁)というが、日銀は景気の回復シナリオに自信を持ちきれていない。
CPや社債と違い、7兆円規模の特別オペの解除は、中小・零細企業の年度越え資金にまで影響が及ぶ。この日は中小企業金融円滑化法案が閣議決定されたが、「政府サイドと折り合いをつけた」(ニッセイ基礎研究所、櫨浩一経済調査部長)との見方さえある。
消費低迷に伴うデフレ懸念も依然強い。総務省が30日発表した9月の全国消費者物価指数(平成17年=100、生鮮食品を除く)は100・2と前年同月比で2・3%低下し、7カ月連続下落した。
食料品や衣料など流通業界では、値下げ合戦が過熱している。企業の売り上げと賃金が伸び悩み、消費が盛り上がらない「負の連鎖」から抜け出せない。日銀の展望リポートも、23年度までのデフレを予想し、「当面は金融緩和」(白川総裁)を続けざるを得ない状況で、利上げというもう一つの「出口」は遠い。
「(日銀が考えるより)景気はもっと厳しい」と発言していた藤井裕久財務相は「さらに所得・雇用環境は悪くなっている」との見方を示した。景気が「二番底」に陥れば、日銀は「出口」どころか、市場と政府から、追加の金融緩和策を迫られることになる。