■首相、「県外」なお選択肢
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題をめぐり、鳩山由紀夫首相は30日の参院本会議で「県外、国外(移設)と衆院選前に申し上げた。それは多くの県民がいまだに県外移設を望んでいるからだ。そのことなども勘案し、できる限り県民の意思に沿った結論を出したい」と述べ、県外移設をなお選択肢に含めつつ自ら最終判断する考えを表明した。
一方、米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)への統合案を模索する岡田克也外相は30日夕の記者会見で、統合案について「果たして案になるかを検証している段階だ」と発言を後退させた。その上で「私自身の方向性が決まった上で果たして沖縄の皆さんに受け入れられるかを自ら行って確認したい」と述べ、自ら沖縄県側の説得にあたる考えを示した。
岡田外相は30日夜、29日に続き、在日米軍のライス司令官、ルース駐日大使と外務省で会談、普天間代替施設建設地が同県名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部となった経緯について検証を続けた。
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米政府が日米合意の履行を強く迫る中、実現可能な案は日米合意に基づくキャンプ・シュワブ沿岸部(沖縄県名護市)への移設案しかない。それでもなお政府が日米合意以外の新案を模索するのは、「見直しの方向で臨む」と明記したマニフェスト(政権公約)との整合性をとる必要に迫られているためだ。
もっとも問題になるのは鳩山由紀夫首相が繰り返す「沖縄県民の意思に沿う結論」が、どこにあるのかということだ。
「基地の移設は庭石をいじるのとは違う。聞き苦しいとはいわないが、もう少しじっくりとした取り組みが必要ではないか」
沖縄県の仲井真弘多知事は30日の記者会見で、着地点を見いだせない政府にいらだちを隠さなかった。
仲井真氏は、岡田克也外相が模索する嘉手納統合案も「もう一つの基地機能を追加するのは地域の人々の負担感が大きすぎる。許容できる限界をはるかに超える」と切り捨てた。
嘉手納基地は3700メートル級滑走路2本を備える極東最大の米空軍基地だ。F15戦闘機の飛行による騒音被害が深刻で、同基地に普天間飛行場の海兵隊ヘリ部隊を移せば、騒音はさらに増すというわけだ。
米側も飛行高度が異なる戦闘機とヘリの同時運用などに強い難色を示しており、受け入れる可能性は極めて薄い。モレル米国防総省報道官は29日の記者会見で「空軍と海兵隊の運用を一つにすることはできない」と断じた。
それでも岡田氏らがなお嘉手納統合案にこだわるのは、米国防総省が策定中の「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)に伴い、嘉手納基地のF15移転の可能性が浮上しているからだ。F15削減で空くスペースを普天間の海兵隊ヘリ部隊に活用。さらにF15の機数を大幅削減できれば、全体の騒音レベルを軽減できる可能性があると踏む。
与党幹部は今月4日、15年の米軍使用期限を設ける統合案を嘉手納町に提示したが、町議会は28日に案に反対する意見書を全会一致で採択してしまった。
一方、首相は県外移設にもなお言及し続けるが、政府内で具体的な検討作業は進んでいない。嘉手納以外で浮上している案はいずれも沖縄県内だ。
防衛省は今月、伊江島補助飛行場(伊江村)、下地島空港(宮古島市)などで調査を行った。両施設とも過去の日米協議で移設先に浮上したが、いずれも沖縄本島に駐留する海兵隊地上部隊と切り離されることなどを理由に米側が拒絶し、頓挫した経緯がある。
つまり、沖縄県、米側とも妥協できるギリギリの線は、現行計画の沖合修正しかないわけだ。結論が見えているのになお煮え切らない政府の対応は、日米同盟への不信を募らせるばかりか、沖縄県民の反発を招きかねない。(赤地真志帆)