鳩山由紀夫首相が国際的に公約した温室効果ガス排出量の「25%削減」をめぐり、経済への影響を試算する政府の有識者会議(タスクフォース)の議論が混迷を深めている。閣内に温暖化対策の明確な司令塔がおらず、政策内容も固まっていないためだ。もっぱら25%の“衝撃”を和らげる政治的な思惑ばかりが先行しており、19日にまとめる検討結果に十分な説得力を持たせることができるかどうか疑問視する声も多い。(粂博之)
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「小沢鋭仁(さきひと)環境相を招いて発言の真意を聞きたい」
2日午後、都内のホテルで開かれたタスクフォースで、委員の一人である山口光恒東大特任教授は、小沢氏が発信した“看過できない発言”について、当惑気味にこう語った。
問題の発言は、ロイター通信が10月23日に配信した小沢氏とのインタビュー記事で出た。この中で小沢氏は、首相が国際公約した「2020(平成32)年に温室効果ガスの排出量を1990年比25%削減する」との目標について、「引き下げる可能性はゼロではない」と指摘した。
首相が公約の前提条件とした「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意」が実現できなかった場合を想定した発言だが、タスクフォースは「25%削減ありき」(飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長)で議論している。この段階で見直しを示唆されると、議論に影響しかねず、不信感は広がったままだ。
◆“成果”挙げたが
タスクフォースは小沢氏や菅直人副総理・国家戦略担当相、直嶋正行経済産業相らがメンバーを務める「地球温暖化問題に関する閣僚委員会」の下にある副大臣級中心の検討チームが設置した。座長の植田和弘京大教授を含め7人の有識者が参加。前政権下で出された負担の試算結果を再検討することが任務だ。
その底流には「負担やコストの話ばかりでは、政治的にはたまらない」(福山哲郎外務副大臣)という考えがある。要するに「温暖化対策の負担をできるだけ『消す』ことが目的」(経産省幹部)というのだ。
例えば前政権での試算によると、25%の排出削減の結果、家計は年36万円の負担増を強いられるほか、粗鋼生産量の2割削減など産業活動の抑制も必要とされた。タスクフォースは10月30日、36万円負担について「(実質可処分所得の目減り分22万円と光熱費の上昇分14万円という)2つの数字を加算するのは不適切」との報告を策定し、最初の“成果”を挙げた。
◆試算どうなる
だが、それ以外では、議論は足踏み状態だ。背景には、温暖化対策に具体性がないという事情がある。実際、タスクフォースは温暖化対策の「効果」を試算に加味するよう求められているが、政策の中身はいまだにはっきりしない。
例えば再生可能エネルギーで作った電気を全量、電力会社が買い取る制度の導入も対策の一つだが、肝心の価格設定や導入時期はみえず、閣僚らの考え方もバラバラ。菅氏が10月31日の講演で来年度からの導入を表明する一方、11月2日に行われた経産省の政務三役会議では「来年度からという結論にはなっていない」(近藤洋介政務官)と確認する迷走ぶりをみせた。
結局、A4判1枚の両面に大まかな検討内容が書かれた指示書しか「すがるものがない」(内閣官房)のが現状で、司令塔は不在。2日のタスクフォースでは、試算は学究的であるべきか、政策論にまで踏み込むべきかで意見が割れる混乱も露呈した。政治の思惑をすべて踏まえれば「試算結果より、注釈の方が多くなるかもしれない」(植田座長)とのあきらめの声も漏れている。