【ワシントン=渡辺浩生】米国の著名投資家、ウォーレン・バフェット氏(79)が率いる投資会社バークシャー・ハサウェイが4日までに、米大手鉄道会社バーリントン・ノーザン・サンタフェの買収を発表した。投資額は266億ドル(約2兆4千億円)。バフェット氏にとって人生最大の株式投資だ。米経済の回復や石油価格の上昇を追い風に、車社会の米国で衰退を続けた鉄道産業が再び成長軌道に乗る? その投資判断に多くの関心が集まっている。
●すべての株式買収
「すべては米国経済の将来に対する賭けである」。バフェット氏は声明でこう述べた。バークシャー社はすでにバーリントン社の株式の22・6%を保有。今回の投資は、残り77・4%について、現金と株式の交換により1株当たり100ドルで買収するもので、全保有株式の価値は440億ドルに相当。バーリントン社の債務100億ドルも引き継ぐ。
同社は米鉄道2位で、穀物や石炭などの貨物輸送では最大手。買収発表後、ニューヨーク株式市場は鉄道株が軒並み上昇した。
世界的な大富豪で慈善家のバフェット氏は、長期投資を基本姿勢とする投資哲学で知られる。
昨秋以降の金融危機では、米ゴールドマン・サックス株を購入して経営危機から救ったほか、「今こそ米国株を買いなさい」と奨励していた。
●交渉たったの15分
なぜ今、鉄道会社が買いか。バフェット氏は英紙フィナンシャル・タイムズに対して「経済の調子が良ければ、底堅いビジネスだ。私は経済が良くなると信じているよ」と語っている。
米経済は2009年7〜9月期に5期ぶりにプラス成長へと回復した。まだ景気の足取りは不透明だが、バフェット氏は、米経済が危機を完全に克服し、持続的な成長軌道に乗ると確信しているようだ。
経済活動が活発化すれば陸上輸送の需要は増す。石油価格の上昇や、地球温暖化対策の進展で、輸送の主役はトラックから鉄道へ回帰する可能性もある。しかも、バフェット氏が支持するオバマ大統領は4月、環境対策と雇用創出を兼ねて、米本土の主要都市を結ぶ高速鉄道整備に巨額の予算を投じる計画を発表。その追い風も無視できない。
鉄道は、自動車産業と違い「海外経済からの競争圧力を受けない」(米紙ウォールストリート・ジャーナル)。競争相手が少ない良好な銘柄を割安なタイミングで購入するのは、長期保有を重視するバフェット氏の投資の極意に沿ったもので、10〜20年先の利益を見込んだ判断だった。ただ、交渉は「15分間」のスピード成立だった、とCNBCテレビに語っている。