■軍・官僚細るパイプ 日本パッシングも
【ワシントン=有元隆志】オバマ米大統領は12日、就任後初めて日本を訪問する。アジア歴訪の最初の訪問国として同盟国日本を訪れることで、来年の日米安全保障条約改定50周年に向け、協力関係の強化を訴えたい考えだ。しかし、鳩山政権は「日米同盟基軸」「対等な日米同盟」といった言葉だけが独り歩きし、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設をめぐる迷走が続く。いらだちが深まる米国も鳩山政権との距離感を測りかねているのが実情で、同盟関係は冷却化の恐れをはらんでいる。
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9月下旬、普天間飛行場の移設問題に関するクリントン国務長官の発言が米政府内で波紋を広げた。長官は9月21日の岡田克也外相との会談で、普天間移設問題について「現行計画が基本」としながらも、「パートナーシップの精神で話し合っていく」とも述べた。米政府関係者によると、普天間問題で再交渉の意思があると誤解されるのでは−との懸念が政権内で出たという。
10月中旬、キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が急遽(きゅうきょ)日本に派遣され、普天間移設をめぐる再交渉や、沖縄県内の嘉手納基地への統合案には応じられないとの米側の立場を伝えた。米側の姿勢を決定づけたのはゲーツ国防長官の10月下旬の訪日だった。長官は11月の大統領訪日までに普天間問題を決着するよう迫った。
当初、米側は鳩山政権の誕生に「忍耐が必要」と多少の混乱を容認する姿勢を示したが、ゲーツ長官の対応は「外圧で日本を動かす古い手法に戻った」(オバマ政権に近い日本専門家)格好。もっとも、「外圧」を強めると日本側の反発を招くとして、米政権内外からは「鳩山政権を追いつめるべきでない」との声があがった。このため、13日の首脳会談では、普天間問題で突っ込んだやりとりはせず、「協力関係を強め、信頼を深める機会となる」(キャンベル氏)見通しだ。ただ、日米関係に詳しい米議会筋は「鳩山政権が基地問題などで決断できないとオバマ政権の日本への関心は薄れ、ジャパンパッシング(日本素通り)につながる」と懸念する。
また、インド洋での海上自衛隊の給油活動が中止になった場合、議会を中心に「安保ただ乗り」批判が強まり、通商問題に波及する可能性もある。10月下旬、ワシントン市内で行われた日米貿易フォーラムで、米側は、米国産牛肉の輸入制限やコメの最低輸入量(ミニマムアクセス)問題に加え、日本のエコカー助成制度が米自動車会社を排除しているなどとして、米議会から不満が高まることも予想されると指摘した。
これまで日米は基地問題などで対立しても、官僚同士や軍と自衛隊のパイプなど複数のルートで補っていた。日本政府関係者は「『実利的』なオバマ政権に加え、『脱官僚』を目指す鳩山政権の誕生で、着地点を模索することが難しくなっている」ともらす。
保守系シンクタンク・ヘリテージ財団のブルース・クリングナー上級研究員は、いまの日米関係を「家庭内別居」にたとえる。
「離婚はなく、表向きは笑顔をみせるが、心の中では相手との困難な思い出がたまっている。修復可能だが、最初から緊張関係が続くのは良い兆候ではない」