CNN特派員が教えるエグゼクティブとのコミュニケーション術
2009年8月28日(金)18時34分配信 ゆかしメディア
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日々世界のビジネスエグゼクティブと接する経営者やビジネスパーソンにとって、初対面時のコミュニケーションは、その後のビジネスを左右する最も気を遣う場面です。どうすれば初めて会った人と早く打ち解けられるのか、限られた時間の中でどこまで心を開いてもらえるのか、それは誰もが知りたいコミュニケーションテクニックのはず。では、取材の度に異なる人物にインタビューし、限られた時間の中で最大の効果をあげることを仕事としているプロフェッショナルは、日々どのようなことを心がけて取材に臨んでいるのでしょうか?
今回YUCASEE MEDIA(ゆかしメディア)は、来日中のCNN(Cable News Network)ハバナ支局長兼特派員、モーガン・ニール氏へインタビュー。ニール氏は9月放送のCNNjの番組、「ユニークリー・ジャパン」の中でダルビッシュ有選手と隈研吾氏にインタビュー取材をしています。
これまで世界中の政治家、著名経営者など数々のセレブリティを取材してきたニール氏。ダルビッシュ選手・隈研吾氏を取材した際のエピソードを交えつつ、彼が心がけているエグゼクティブとのコミュニケーション術について語っていただきました。
■ダルビッシュ選手の野球への並外れた集中力に驚かされた
―今回は「ユニークリー・ジャパン」の取材のために来日されたのですね?
「はい。『トーク・アジア』という番組で日本野球界のスターであるダルビッシュ有選手と、国際的に名高い建築家の隈研吾さんにインタビューしました。日々世界中を飛び回っていますが、日本に来たのは初めてです。」
―ダルビッシュ選手のことはそれまでご存知でしたか?
「彼は日本以外の国でも野球界では伝説的な存在で、インタビューする前からよく知っていました。私自身野球が大好きですし、アメリカ、キューバ、メキシコ、ベネズエラなど野球がナンバー1スポーツの国で多くのレポートを経験してきたのですが、それらの国でもよく知られていましたね。若手では世界で3本の指に入る選手だと思います。」
―会う前と後では、印象は変わりましたか?
「彼に会った時の最初の印象は、非常に卓越したレベルで、自分の職業である野球に対する集中力が高いこと。そして目標に対するモチベーションが高いことです。22歳という若さに見合わない経験を今までしてきたことを感じました。高校野球の頃からプロになるまで、常にマスコミに追いかけられ、注目されてきたのでしょう。そういうさまざまな全ての経験を通して、今の彼があるんだなということを感じました。自分が22歳だった頃を考えると、目標に向かって邁進する彼の強い意志と集中力には驚かされました。」
■ダルビッシュ選手のボディーランゲージに注目してほしい
―インタビューの中で、特に印象に残ったことは何ですか?
「私生活から野球のことまでさまざまな質問をしましたが、野球の話になるとがぜん、彼の目が一段と輝きだし、体全体で熱意を示してくれたことです。放送時は話す時の手や体の動きなど、彼のボディーランゲージに注目してください。ボールの握り方やピッチングフォームなどの野球の技術的なことを教えてほしいと言ったら、彼は目を輝かせて前のめりになって、1つ1つ職人のように教えてくれました。私にわかってほしいという気持ちで、すごく丁寧に熱心に話してくれて。彼の野球に対する喜びや情熱がすごく伝わってきました。」
―ダルビッシュ選手は、将来のビジョンについては触れていましたか?
「もちろん、将来についての質問もしました。本人にはアメリカでプレイしたいかどうかを聞きましたし、彼だけでなく彼のファンや他の球団の監督にも意見を聞いたりしました。いろいろと微妙な問題があるので彼は何も明言していませんが、予想よりははっきりとした反応を感じましたね。昔よりはそういう可能性を身近に感じていることがわかりましたね。」
■プロフェッショナルとの会話では、素人であることが有利に働く場合も
―隈研吾さんには、どのようなテーマでお話を伺ったのですか?
「デザインに対するアプローチ全般ですね。彼が主に語ってくれたのは、伝統的な日本の建築を再生する仕事、彼の広い職域についてや、常に世界中でいくつものプロジェクトを抱えていて年に1日か2日しか休めないことなど。また抽象的な概念を、ある地域のある環境の中で具体的にどう表現していくのか、なども語ってもらいました。」
―これまで日本の建築家に会ったことはありますか?
「ないですね、アメリカ人の建築家もないです(笑)。私は建築という分野の専門家ではないので、事前にたくさんリサーチをして臨みました。その世界のトップの方とコミュニケーションする際、その分野の素人であるということは、有利に働くこともあります。それは『この分野はわからないから、知らないから教えてください』と言うことができるということ。そうすれば相手の懐にスムーズに入れるかもしれない。隈さんは建築のプロではない私に、非常に丁寧に、熱心に教えてくれました。」
―実際に建築現場にも足を運ばれたのですか?
「彼のオフィスに行ったり、改装中の根津美術館の現場も見学させてもらいました。そこで彼から実際に、なぜこのような設計をしたのか、例えばある置石をある特定の間隔で並べた理由や、そんな風に置いてあるのかというのを解説してもらいました。それまで、建築家は皆、ハイテクなオフィスでコンピューターで仕事をしているというイメージを持っていました。たしかにそういう部分もありますが、建築は実際現場で建築家本人が関わる部分が大変大きい、ということが今回わかりました。建築に使う建材の素材についても詳しくなければ仕事にならないということも。建築家は職人さんたちと費やす時間が非常に多くある。それが私にとっては新しい発見でした。」
■限られた時間の中で最大の成果を出すコミュニケーション
―今回の収録を含めて、ニールさんはこれまで多くの著名人にインタビューされてきたと思います。初対面の相手と限られた時間の中でコミュニケーションする際、最大の効果を生み出すためにどのような点に注意されていますか?
「まず、基本的なことですがどんな場合も、きちんと相手の目を見て話すこと。次に『オープンエンドクエスチョン』です。これはイエスかノーで答えられる質問はなるべく避けて、誰が、いつ、どこで、どうしてなどの疑問符を使って質問をしていくテクニックです。イエスかノーで答えられる質問では、そこから話が展開していきません。自分の知らない相手の情報を引き出し、話を広げていく糸口を見つけるために有効な手段です。」
―相手によっては、話を引き出しにくい場合もあるのではないですか?
「もちろん、すぐに打ち解けてくれる人もいれば、打ち解けるのが難しい人もいます。それはだいたい最初の質問をした瞬間にわかりますね。打ち解けるのが難しい人に対しては、質問の順番を変えたりします。予めこういう順番でいこう、と質問の順番は考えてありますが、相手が答えやすいだろう質問を先に持ってくるのです。まず人間関係をウォームアップしてから、核心の質問へと導いていきます。でも時間は限られていますし、その中でいかにベストな答えを引き出すかという戦いですから、ウォームアップにあまり時間を割くことはできません。常にバランスを見つつ、相手が心地よく話せる状態にもっていくことが大切です。」
―各国で取材していると言葉が通じない、文化が異なるなど、コミュニケーション上の障害も多いと思いますが。
「言葉がわからない時や通訳の人を通す時は、相手のボディーランゲージを見ます。すると、その人の精神状態がすごくよくわかるんです。これはジャーナリスト、インタビュアーなら誰もが感じていることだと思いますよ。」
―コミュニケーションテクニックは、経験を積めば上達していくものですか?
「もちろん、経験を積むに従って、インタビューテクニックは上達していきます。しかしジャーナリストは、絶対に『これでマスターしました』ということはありえない世界です。これは70代のジャーナリストの方が言っていたことですが。自分が日々経験したことを自分の感性を通して伝えていく仕事で、自分が完成する日など来ないのですから、マスターしたという瞬間もあり得ないわけです。私も駆け出しの新聞記者のころは、ひどいインタビューをたくさんしてしまいました(笑)。」
■国際ジャーナリストという仕事の醍醐味
―特派員の仕事の一番のやりがいと苦労は何ですか?
「私にとって一番の魅力は、常に新しい場所に行く、新しい人に会うチャンスが与えられることですね。競争が激しい世界なので、すごく自分が努力して、勝ち取らないと残れません。そういう意味では、なってよかったと思う仕事です。苦労は、24時間365日オンコールだということ。電話が鳴ったらすぐに生中継のレポートをしてくれと言われるので、オンとオフの差はあまりありません。私も時々はプライベートと仕事を切り離したいと思う時もありますが、でもこれはジャーナリストの宿命だと思っています。天災などが起こった場合は、誰かが現場に行かなくてはなりませんから。」
―最後に日本の方へ、CNNの魅力を伝えてください。
「CNNは世界中に自社の支局があり、自社のコンテンツを伝えられるニュースネットワークです。世界中のニュースを自分たちの特派員のレポートで伝えることができ、視聴者もすぐにそれにアクセスできる。それがCNNの最大の魅力だと思います。」
今回初来日し、ダルビッシュ選手と隈研吾氏への取材を通して、日本への認識を新たにしたモーガン・ニール氏。そのインタビューテクニックは、言われてみると当然のことながら、いざ実行するとなると難しい、しかしあらゆるビジネス上のコミュニケーションに通じるものでした。常に現場の最前線に立って、世界中の人々にニュースを届けるCNN特派員という仕事。その厳しさとやりがいについて、生き生きと語るニール氏の表情が大変印象的でした。
【モーガン・ニール氏 プロフィール】
ヴァージニア大学で学士号取得、ボストン大学で国際関係学の修士学位取得後、2000年にメキシコシティで新聞記者としてジャーナリストの経歴をスタート。アトランタのCNN本部でライター、コピーエディター、現場のプロデューサーとして経験を積み、CNNのラテンアメリカ全域からニュース取材を行う。2006年からハバナ支局勤務となり、現在CNNハバナ市局長兼特派員として、キューバのニュース報道を担当している。
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