どこから始める?犬との生活 (1)
2009年10月20日(火)12時5分配信 dog actually
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犬を飼いたいと思ったとき、自分のライフスタイルに合った犬種選びはまず大切なポイントだが、今回はあえてもうひとつの大事なポイントをみてみようと思う。
仔犬を受け入れるのは一番の選択か?
犬を探すとき日本だとまずネットで探してみたり街のペットショップに出向いたりするのが一般的だろう。しかしネットなどでブリーダーを探す以外、そこで目に付くのはいずれも仔犬の姿だ。丸い顔つきに短い手足、仔犬のおぼつかない足取りが特に女性の母性本能をくすぐるのは自然なことだが、だからといって頭の中に「犬を飼う=仔犬から育てる」という図式がいつの間にか出来上がってはいないか?
動物保護団体による里親募集でも仔犬の方が引き取り手が早く見つかると言うのがその傾向の現れでもある。
昔、ドイツでは「小さな仔犬をヒトの手で育てると将来性格が歪む」と言われた。だから仔犬は自分で外界に興味を持ち出てゆけるようになる時期まで、できるだけ長く親兄弟から引き離さず育てるのが良いとされ、仔犬を他の家庭に譲るのは仔犬が親元を自分から離れるようになる生後2ヶ月くらいからが普通とされていた。それと同時に、仔犬を早い時期に親兄弟から離してしまうことは健康面にもあまりよい結果を招かないと言うことも経験から学んでいた。昔の人はよく犬を観察していたものだ。
現在ではこれらを裏付ける犬の行動研究が進み、昔ながらの定説を覆すことがいよいよ難しくなり、ドイツやイギリスでは獣医学的な理由なくして母犬と仔犬を生後8週以前に引き離すことは法的にできなくなった。
親元で長く過ごすと言うことは母乳をどれだけ長く飲んだかと言うことのほかに仔犬の精神面での成長に不可欠な親犬や兄弟犬、その他の犬との接触が充分にあることを意味している。
例えば母犬の元で育った兄弟犬たちと、早くに母犬から引き離されヒトの手によって哺乳瓶を与えられて育った兄弟犬を比較した調査では双方の状況に置かれた犬の社会性には差は見られず、むしろ母犬の存在よりも兄弟犬や他の犬との接触があるかどうかと言うことに重きが置かれるということだった(Haug Jeanette Kerstin: Vergleichende Untersuchungen zum Verhalten von Beaglewelpen aus Hand- und Mutteraufzucht
)。
ここで犬の自然行動を知る上で大事な指標となるオオカミの例をちょっと見てみよう。
まず母オオカミは産後必ずしも四六時中仔オオカミについているわけではない。仔オオカミ達は生後4週頃まで母オオカミが不在の間巣穴の中に置かれ、外部から守られている。その後仔オオカミ達の体が成長するとともに徐々に行動範囲は広がって行き、巣穴の外にでる頃には今度は群れの中にいる乳母役のオオカミによって群れのルールが教えられるようになる。一方で少しずつ母オオカミは仔オオカミと距離を置いてゆくのだ。
これが同じく犬にも当てはまる。未熟で目も開いていないイモムシのような状態で生まれた仔犬は日に日にめまぐるしい成長を遂げ、3週間も経つと手足が発達してずいぶんと動き回れるようになる。動き回れるようになったら今度は自分発見の時期を迎え、ほぼ同時に社会化の時期の始まりにあたる生後4週へ突入する。この時期にいろんな犬やその他の動物と接触を持つことで視覚(見た目)・嗅覚(におい)・聴覚(音)を駆使して環境要因を認識し、それが後々成犬になってからの社会性の土台を築くことになるのだ。
もしもこの時期に仔犬が人間家族としか接触がなかったり、家の中にこもって暮らしていると将来的に何かしらの問題行動が発生しても全く不思議ではないだろう。犬が犬であるということ、そしてこの世の中にあるさまざまな環境に適応できるためにも決して侮ってはいけない大事な時期なのだ。
ということは、仔犬を家族として迎えるならばそれなりの覚悟が必要と言うことに?
そう、社会性の養育は仔犬の正常な成長に欠かせないけれど、残念ながら飼い主は母犬や兄弟犬の代わりは出来ない。ということは、仔犬を出来るだけ多くの犬と接触させるために足しげく犬の集まる場所に通わなければならないし、頻繁に外出して外部環境に慣らさせる必要だってある。そのうえ家の中でやっていいことといけないこと、家族のルールなどもひとつひとつ教えてゆかなければならない。例え仔犬が親元で8週齢まで暮らし、その後新しい家族に迎え入れられたとしても、その先まだまだ成長が止まるまで数ヶ月社会性養育のためのこの地道な作業は続くのだ。
仔犬を無地の紙に例えると色を付けてゆくのは飼い主。将来的に犬らしくかつ人間社会に適応した犬に育て上げるためのノウハウと大まかな完成予想図、そして情熱と時間、それに心のゆとりが仔犬を育てることには要求される。
だから初めて犬を飼うという人には私は仔犬はまず勧めない。初めての犬を仔犬から育てることで経験を積んでゆくのはおもに飼い主の方であって、お互いに一緒に学び育ってゆく気持ちがなければただ犬は練習台にされてしまうからだ。しかも経験がないゆえに過保護なワクチンプログラムにまでつき合わされるお陰で、大事な仔犬の社会化の時期を台無しにしてしまうことが多い。そんなリスクを負ってまでも小さな仔犬が売買されるのはあくまでも小さな仔犬に商品価値を見出している人間側の理由からである。
白紙の仔犬だから色の付いた成犬よりも我が家に馴染みやすいだろう、と言う程度では読みが甘過ぎる。仔犬はとかく手がかかるもの、寝て遊んで食べて出してまた寝る、この繰り返しの意味を想像力を最大にして考えなくてはいけない。
もしもそれなりの覚悟をしたうえであえて仔犬を受け入れるのならば仔犬との向き合い方も違ってくるだろう。できるだけ仔犬の目の高さで考え、仔犬の成長とともに飼い主自身も試行錯誤を繰り返し、仔犬を育てる苦労を実感として受け経験を通して愛情も関係も大きく深まってゆくのならば仔犬を育てることは想像以上に楽しく、また成犬になってからも犬との暮らしの醍醐味を充分満喫できるはずだ。
もしも先住犬のいる家庭ならば仔犬も学ぶものが多く、ヒトが教えるよりも何倍も多く何倍も早く仔犬は犬らしく育ってくれるのだ。
仔犬くらい飼える?いや、本当はその逆、仔犬だからかえって難しい。それでも仔犬から飼いたいか?もう一度自分に問いかけてみて欲しい。
次回は「仔犬をどこから?」についてお話しよう。
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