スロバキア・ワールドドッグショーから考える、犬種の健全性とドッグショー
2009年10月28日(水)13時2分配信 dog actually
スロバキアのショーにてバセットハウンドの健全性について考えさせられた。ちなみにこの写真の犬たちはイギリスから。狩猟で使われていたバセットハウンドだ。現代のショードッグとして姿を変える前までは、かつてこんなにすっきりとしたボディをしていたのだ。 [ 拡大 ]
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スロバキアのワールドドッグショーに行ってきた。予想通り、スロバキアのローカル色が味わえ、同時にヨーロッパのトップドッグがあつまった国際色豊かな楽しいショーだった。
FCI ショーでは過去最高の出陳数となった、とスロバキアケネルクラブから発表も出た。なんといってもスロバキアのまわりにはロシアやチェコなど犬好きな国が集まっている。そこからの参加者が数字に大いに貢献している。ただし、ここに報告するのはショーの結果ではない(それは犬雑誌などを参考にしてね)。ショーを観戦して、ひとつ非常に驚いたことがあったので、それを記したいのだ。
犬ファンの皆さんならご存知のとおり、昨年 BBC によってイギリスのケネルクラブが、その組織のあり方、犬のブリーディングについて、ショードッグの不健全性について、ずいぶんバッシングを受けた。その後、ショードッグの世界が、そして各国のケネルクラブの取り組みが、国を超えて(というか、ヨーロッパ内でしか私にはわからないのだが)健全性に向かって、徐々にでもより引き締まってきたように思えるのだ。
それは、今回嗅覚ハウンドグループ(第3グループ)で3位をとったバセットハウンドを見たときに、はっと思った。今までヨーロッパの大きなショーで勝ってきたバセットと比べて、もちろん皮膚のたるみはあるものの、そのボディ・フォームにずいぶんと健全性が見られる。特に前肢に注目されたい。そしてお腹と地面の間の空間にもっとゆとりがでてきたではないか…!
バセット・ハウンドは、本来もっていた見かけのある部分を極端に強調させて作られた犬である。ゆっくり獲物を追うハウンド犬としてもともと脚は短かった。しかし、その短足様はもっと大げさに、そしてブラッドハウンド譲りの皮膚のたるみも、一層誇張され、今日の家庭犬、ショードッグとして存在している。
カリカチュア化、とまで表現すると意地が悪いが、このような犬種はほかにもブルドッグなどがいる。そしてイギリスのケネルクラブは、これ以上見かけの大袈裟さが促進されないよう、いくつかの犬種に関して、スタンダードの修正を行った。バセットハウンドはイギリスが原産国なので、FCI国はイギリスのスタンダードを尊重する。だからこの新しいスタンダードは日本のバセットハウンド・ブリーダーにとっても非常に大事だ。それによると、「ある程度の皮膚のたるみは好ましい」という記載は削除された。脚の皮膚のたるみについても、「過剰ではないように」というくだりが付け加えられた。
しかしいくらブリーダーが健康的な個体を作ろうとしても、極端な見かけを持つ犬が相変わらずショーリングで勝ち続けていては、モチベーションがあがらない。それに対してスウェーデンのケネルクラブであるが、彼らは大変賢いプロジェクトを開始させた。犬の健全性を守るための「審査員のためのガイドブック」なるものを作成したのだ。注意を要する犬種が49種リストアップされており、従来なら審査員が高く評価しがちな、不健全性を促すある身体の特徴が、犬種別に細かく述べられている。「審査員を教育しなおす」という動きはスウェーデンのみならず、北欧全体にひろがっている。さらにはこのトレンドにイギリス・ケネルクラブはもちろん、アメリカ・ケネルクラブも興味を示している。
もちろんペキニーズやブルドッグのマズルが一夜にして長くなるとは思わない。が、審査員が健全な身体的特徴を持つ犬を、より高く評価し続けてゆけば、自然とブリーダーによるブリーディングの方向性も変わってくる。そして徐々にであるが、最終的にその犬のあるべき姿(スタンダード)が、より健康的イメージに変わってゆくはずだ。
それがもしかして今回のワールドドッグショーのバセットハウンドのチョイスに現れたのだろうか。私はすっかりうれしくなって、ブリーダーのための専門誌でジャーナリストとして活躍しているスウェーデン人の友人、オーサ・リンドホルムさんに、このバセット・ハウンドの写真を見せた。今度は彼女がこれをさらにスウェーデン・ケネルクラブのブリーディング委員会の担当に見せて反応をを聞いてくれた。すると彼らは、今回選ばれたフランス産のバセットハウンドの今までにない、健全な体躯に非常な感銘を受けたそうだ。
このバセットハウンドを審査したのはフランス人審査員だ。もしかしてフランスでは、すでに健全な体躯を持ったバセットハウンドが当たり前なのかもしれないし、あるいは、審査員が昨今のドッグ・ブリーディングとショードッグの動きを察知して、このチョイスにいたったのかもしれない。
いずれにせよ、どんな些細なことでも犬の世界により倫理的な動きが感じられる今日この頃だ。それはショードッグの世界においてすらである。
【関連記事】
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