ポール・クルーグマンが警告する「食糧危機」
(クーリエ・ジャポン 2008年6月号掲載) 2008年5月14日(水)配信
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このところ、世界の金融危機が頻繁に叫ばれている。だが同時に、もうひとつの危機も世界的に進行しており、むしろこちらのほうがずっと多くの人々を苦しめている。
食糧危機のことだ。この数年、小麦や米などの基本的な食糧の値段は2〜3倍にまで跳ね上がった。食糧価格の高騰は、比較的裕福な米国人さえ狼狽(ろうばい)させているが、本当に打撃を受けているのは貧しい国々だ。途上国では、食料への出費が家計の半分以上を占めることも少なくない。
食糧をめぐる暴動は、すでに世界中で起きている。食糧輸出国は、自国の消費者を保護するために輸出量を制限。これに怒った農民は、抗議行動に出ている。食糧の輸入国にいたってはさらに深刻な状態だ。
いったいどうして、こんなことになったのか? 主な原因は原油価格の高騰、新興国の経済成長、主要農産地を襲った悪天候などだ。だが、何よりも明白な政策のまずさは、エタノールを始めとするバイオ燃料の推進である。政府の助成のもと、農作物を燃料へと転換すれば、エネルギーの輸入依存度を減らし、温暖化にも歯止めがかけられるはずだった。だが、サトウキビから精製されるブラジルのエタノール生産のように、「良いバイオ燃料政策」でさえ、開墾(かいこん)による森林伐採を促し、気候変動を早めてしまう。しかも、バイオ燃料用の農地は食糧生産には使えなくなってしまうのだ。バイオ燃料への政府の助成は、食糧危機の主因にさえなっている。言い換えれば、米国の政治家が票田に媚びているせいで、アフリカの人々が飢えているのだ。この点では、大統領選予備選に残っている候補は全員、罪が重い。
さらにもうひとつ。かつては、各国の政府も万一の食糧不足に備えて、大規模な備蓄があった。だが、不作な年も輸入によって解決できると過信し、余剰在庫を縮小し続けてきた。これにより国際社会の食糧バランスは、世界的な危機に対して脆弱(ぜいじゃく)になってしまったのだ。
では、どうすれば良いのか? 最も差し迫った必要は、困窮している人に対する援助の拡大だ。さらに、バイオ燃料政策を押し戻さなければならない。これがひどい過ちだったことは、いまや明らかだ。
だが、どれだけの手が打てるかは、はっきりしない。石油のように、もはや“安価”な食料は過去のものになってしまったのかもしれない。
ニューヨーク・タイムズ(USA)より
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