夏目漱石は「自分がない」空虚な状態からどう脱したのか?――「自己本位」の発見
(ダイヤモンドオンライン 2009年10月15日配信掲載) 2009年10月16日(金)配信
前連載「うつ」にまつわる24の誤解の第16回でも取り上げましたが、現代の「うつ」において、このような悩みが浮上してくるケースが非常に多くなってきています。
今の社会では、幼い頃から「やらなければならないこと」を休みなく課せられてくることが多く、なかなか、ゆっくりと「やりたいこと」に思いを巡らす余裕が与えられていません。
そのうえ、外から「与えられる」膨大な知識を次々に記憶し、「与えられた」方法で要領よく情報処理することを求められるために、人々の多くは、「自分は何をしたいのか?」「これは本当に自分がやりたいことなのか?」といった問いを持つこと自体に、不慣れになってしまっているようです。
しかしながら、このように「主体」を見失ってしまったという悩みは、現代人のみに見られる新しいテーマというわけではありません。これは、近代的自我の目覚め、つまり「主体」として生きたいと真摯に願う人間であれば、昔から避けては通れないテーマだったのです。
今回は、この苦悩に直面した代表的な人物として夏目漱石を参考にしながら、現代の私たちが、失われた「主体」をいかに回復できるかという問題について考えてみたいと思います。
私はこの世に生まれた以上何かしなければならん、といって何をして好いか少しも見当がつかない。私はちょうど霧の中に閉じ込められた孤独の人間のように立ち竦んでしまったのです。(夏目漱石『私の個人主義』中公クラシックス版より)
夏目漱石は、若い頃から内面に「自分が何をしたいのかわからない」という「空虚さ」を抱えていました。
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