Inside the Dragon
中国の真実
2008年4月12日(土)0時0分配信 ナショナル ジオグラフィック日本版
掲載: ナショナル ジオグラフィック日本版 2008年5月号
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Photograph by George Steinmetz
山水画を思わせる石灰岩の奇岩が両岸にそびえる、広西壮族自治区の漓(リー)江。
(c)2008 National Geographic
Photograph by George Steinmetz
晩冬の雪をまとった北京市北部の山肌を縫うように、レンガと石で造られた城壁が続く。古代より外敵の侵入を防ぐ守りの象徴だった万里の長城は、現在では、中国を代表する観光地となった。
(c)2008 National Geographic
文=ピーター・ヘスラー
写真=フリッツ・ホフマン
世界一の経済大国へと成長の一途をたどる中国。未来を担う若者たちとともに時代の変革期を過ごした中国在住のジャーナリストが、この国のいまを語る。
英作文の授業で教え子たちが使っていた用紙は粗悪な安物で、その薄さときたらタマネギの薄皮並みだった。彼らのつづる英語は完璧ではなかったが、そのたどたどしい文章には、不思議に心に訴える力があった。あるとき、一人の青年がこう書いていた。「僕の両親は、貧しい農家の生まれです。木の皮や草まで食べたそうです。母は学校へ行かせてもらえませんでした。女だからです」
別の学生は、母親のことをこんな風に書いていた。「母の髪はすっかり白くなり、歯もぼろぼろです。それでも相変わらず、身を粉にして働いています」。生徒たちは忍耐と勤勉さを尊び、家族について作文に好んで取り上げたが、テーマが国家にまつわる出来事になると、皆、戸惑った様子を見せた。
「私は中国人ですが、この国がどうなっているのか、よくわかりません」と、エアランという名の女子学生が書いていた。「同じように感じている若者は、大勢いると思います」
講師の私も同感だった。海外でボランティア活動を行う米国の平和部隊「ピースコー」の一員として、私は1996年に中国に派遣された。それまで中国に住んだこともなければ、中国語を学んだことさえなかった私でも、実際に暮らし始めると、この国が大きな変革期を迎えつつあるのを肌で感じた。
当時、ケ小平は病気で先が長くないと噂されながらも、存命中だった。中国は世界貿易機関(WTO)に加盟していなかったし、香港は英国からの返還前で、北京市は2000年のオリンピック招致に失敗したところだった。長江の中流域では、世界最大の発電能力を誇る「三峡ダム」の建設が進んでいた。私は、涪陵という、ダムに沈む予定の小さな町で、教師の仕事を任された。教室の窓からは長江が望めた。大河を見るたびに、一体これをどうやって貯水湖に変えるのだろうかと、不思議に思った。
当初、中国に関する私の知識の源といえば、薄っぺらな用紙につづられた学生たちの作文がほとんどすべてだった。一枚、また一枚と読むにつれ、さまざまなことが見えてきた。彼らは国の過去に対して、悲しみや怒りといったマイナスの感情を抱いていて、歴史をテーマにすると、たいていの学生は個人的な内容を書いた。19世紀のアヘン戦争など、遠い過去の出来事にさえ怒りを噴出させる。中国が長い間、衰退の道をたどることになった元凶は、外国による侵略だと信じていたのだ。
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