09年4月「消費税増税」の罠に騙されるな
「地方法人特別税」2・6兆円。
「揮発油税暫定税率廃止」2・7兆円。
「所得税定率減税廃止」2・6兆円。
「消費税1%増税」2・6兆円。
…この不気味な符合は何だ!
(SAPIO 2008年3月26日号掲載) 2008年3月28日(金)配信
文=森永卓郎(エコノミスト)
ガソリン税と比べほとんど国会論戦の俎上に上らぬ消費税だが、森永卓郎氏によれば、税率引き上げに向けた地歩固めは密かに着々と進められているという。そこで政府が唱えるのが「消費税なくして日本は立ちゆかない」という理屈である。しかし、森永氏はこの前提からして「ウソ」だと喝破するのだ。消費税引き上げのトリックを暴く。
偶然の一致にしては、あまりに金額が一致しすぎていて、怪しいと感じていたものがある。「地方法人特別税」の2・6兆円と、「揮発油税の暫定税率を廃止した場合の減税額」2・7兆円、そして2007年以降廃止された「所得税の定率減税」2・6兆円の3つである。さらにもう1つ加えると、消費税を1%上げたときの増収もなんと2・6兆円である。あまりにキレイに金額がそろいすぎて気味が悪い。
私がこの話をすると、「単なる偶然だ」と否定する人が多いが、先日、自治官僚出身で自民党参議院幹事長も務めていた片山虎之助氏に会ったとき、この質問をぶつけてみると、笑いながら「そんなこと当たり前だ。最初から金額を合わせてあるんだ」と答えた。あれをやめたらこれをやるといった具合に金額が揃えられているのだ。いかにも財務官僚が考えそうなことである。
この事実に気づいたとき、私には一つの図式が見えてきた。それは一言で言えば、「地方法人特別税は罠だ」ということである。
地方法人特別税(と地方法人特別譲与税)とは何かというと、平成20年度税制改正大綱で決定したもので、大都市と地方の税収格差を減らすため、民間企業が納める法人事業税(地方税)の半額を人口や従業者数に応じて地方自治体に配分するという制度である。民間企業は大都市に集中しているので、この制度の導入で東京都は3000億円、愛知県は400億円、大阪府は200億円の減収になり、全国の大都市で減らされた分が地方にばらまかれることになる。
東京都の石原慎太郎知事はこの案に猛反対してきた。税収が大幅に減る都からすれば当然のことであろう。ところが、昨年12月11日に福田総理と会談をもつと、いともあっさりこの税制を了承した。おそらくは、東京五輪の誘致・開催や外郭環状道路の建設、羽田空港の国際化などに対する国の支援を取り付けたのではないかと考えられる。
それについては特に言及しないが、私が注目したのは、この新税制が「暫定措置」となったことだ。1月25日にこの暫定法案が可決された。
政府は暫定法案としておいた方がいつでも廃止できるので、都合がいいと考えたのではないか、と私は見る。地方自治体にとっては、地方法人特別(譲与)税の分配は、何の努力もなしに天から降ってきたかのような増収となる。自治体は暫定措置であることを忘れて、増収分を予算編成に組み込んでしまうと、後から削るのは難しくなる。
バックナンバー記事
- 「スタジオの華」は邯鄲の夢 女子アナ下流時代がやってきた (SAPIO 2009年11月23日(月))
- 相次ぐ訴訟に隠蔽工作文書まで流出「JAPANデビュー」問題の収拾困難=井上和彦 (SAPIO 2009年11月19日(木))
- 「記者クラブ開放」に反対する新聞・テレビはいったい誰の味方なのか=上杉隆 (SAPIO 2009年11月16日(月))
- 日米のグリーンを席巻する韓国女子プロゴルファーの「芳しくない評判」=鵜飼克郎 (SAPIO 2009年11月3日(火))
- 新聞・テレビが報じない新型インフル 「本当は恐ろしい話」=油井香代子 (SAPIO 2009年10月29日(木))
