シャリフ新政権£a生でテロリストの「ハブ空港」になる
アメリカ重視から内向き国家へ
(SAPIO 2008年4月9日号掲載) 2008年4月14日(月)配信
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文=SAPIO編集部
2月18日に行なわれたパキスタン総選挙は、今後の国際情勢を占うという意味で世界の注目を集めた。結果はムシャラフ大統領の与党PML−Qが大敗を喫し、暗殺されたブット元首相が率いてきたPPPが第1党に躍進した。これによって、PPPは第2党になったシャリフ元首相のPML−Nと連立を組んで過半数を握り、政権交代が確実になったのだ。 「野党が勝利したのは、ブット元首相暗殺の同情票もさることながら、ムシャラフの政策が否定されたからです。彼はアメリカのブッシュと手を組み、テロとの戦いという大義の下で国内のイスラム教徒を虐殺してきました。また、経済優先の政権運営と引き換えにイスラムの教えを蔑ろにしてきた。それらすべてにパキスタン国民は『NO!』を突きつけたのです」(現地で選挙を取材したフォトジャーナリスト・渡部陽一氏)
選挙後、野党両党はPPPから新首相を選出することで合意。ブット元首相の死後、PPPは後継総裁に19歳の長男・ビラワル氏を選んだものの、被選挙権すらないため父親のザルダリ氏が共同総裁を務めることになった。しかし、ザルダリ氏は過去に首相の夫という立場を使って高額の手数料を強要し、「ミスター10%」と呼ばれるほどの悪評高い人物で、過去に8年間もの投獄経験がある。そこで浮上するのがシャリフ元首相だ。 「ムシャラフの後にパキスタンの舵取りを実質的に担うのはシャリフでしょう。昔の汚職疑惑の関係で今は議員ではありませんが、ブットと同じくらい知名度があり、国民の信頼も高い。連立政権の顔となるのは彼以外にいません」(渡部氏)
そのシャリフ元首相はかつて1999年に起きた軍事クーデターで追放されたが、このとき政権を奪取したのが当時陸軍参謀総長だったムシャラフ大統領だった。ムシャラフ政権は親米路線を明確にし、テロとの戦いに自ら乗り出していった。その見返りにアメリカから100億ドルを超える経済・軍事援助を手にし、パキスタン経済は息を吹き返した。しかし、国内のイスラム主義勢力への取り締まりが強化されたことから国民の反発を買い、武装勢力による自爆テロが頻発。テロを押さえ込むために強権を発動し、武力行使に走ったことから軍事政権として国際社会で非難されるようになった。 「シャリフ主導でアメリカ重視から内向きのイスラム主義重視になるでしょう。そうなれば隣国にいるタリバーンやアルカイダに対しても融和的に接することになり、パキスタンが果たしてきた防波堤としてのテロリストのカーテン≠ヘ開けられてしまう。テロリストは堰を切ったように流れ込み、やがて国外に飛び散っていきます。つまり、パキスタンはテロリストのハブ空港≠ノなりかねないのです」(渡部氏)
パキスタンがテロとの戦いに手を抜けばアメリカが黙っていないだろう。パキスタンに米軍を派遣すると明言しているブッシュ大統領に対して、断固抵抗するシャリフ元首相の間で緊張が高まるはずだ。口実をつけてアメリカが米軍駐留を強行すれば、第2のアフガニスタン、イラクになりかねない。
イスラム教国で唯一つの核保有国パキスタンには、50〜60発の核弾頭が存在する。南アジアの地政学的リスクが高まれば、世界が危険に晒されることになるのだ。
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