雅子妃のご病気を理由に「祭祀王としての天皇」という皇室の根幹を毀損していいのか
天皇「9時−5時勤務制」まで飛び出した宮中祭祀廃止論の大いなる誤り
2008年5月2日(金)0時0分配信 SAPIO
掲載: SAPIO 2008年4月23日号
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文=八木秀次(高崎経済大学教授)
「これは新種の天皇制廃止論である」
皇室問題に詳しい高崎経済大学・八木秀次教授は、いま雅子妃を巡って起きている不穏な動きにこう警鐘を鳴らす。妃殿下のご病気を理由に「宮中祭祀」の廃止を求める動きがあるというのだ。皇室のことを思っていると称しながら巧みに天皇制廃止へと導く言論人の詐術を暴く。
このところ週刊誌等のメディアで、「宮中祭祀」が雅子妃にとって大きなストレスになっていることを理由に、「宮中祭祀を簡素化、もしくは廃止せよ」とする論を目にするようになった。1年ほど前のSAPIO誌(07年5月9日号)で、そういった意見に対して反論させていただいたが、その当時、危惧していた通り、ここにきて再びこの議論が蒸し返されようとしている。
この論の中心にいるのは、やはり明治学院大学の原武史教授で、『文藝春秋』4月号の「引き裂かれる平成皇室」と題された座談では、「たとえば祭祀をすべてやめるような抜本的な改革をしなくては、うまくいかないのではないかという気がします」と、はっきりと宮中祭祀の廃止を提言している。簡素化を飛び越え、「すべてやめる」とまで踏み込んできているのである。
宮中祭祀とは、天皇家が宮中で行なう祭祀のことで、皇祖天照大御神が祀られる「賢所」、歴代天皇・皇族が祀られる「皇霊殿」、国中の神々が祀られる「神殿」の宮中三殿で行なわれる祭儀をいう。天皇自らが祭典を執り行なう「大祭」、掌典長が行ない天皇が拝礼する「小祭」、毎月1日、11日、21日に行なう「旬祭」に分けられ、11月23日の新嘗祭や1月1日の四方拝、4月3日の神武天皇祭など大きなものだけで年間30近くある。世間ではあまり知られていないが、天皇は宮中で頻繁に祭儀を行なっている。
古来から天皇は先祖を祀る「祭祀王」としての性格を持ち、実はそれこそが天皇の本質的要素と言っても過言ではない。五穀豊穣を「祈る」のが天皇である。その祭祀をやめろというのである。
この論が出てきた発端は、06年2月23日の誕生日記者会見で皇太子殿下が「宮中で行なわれている祭祀については、私たちは大切なものと考えていますが、雅子が携わるのは、通常の公務が行なえるようになってからということになる」とご発言されたことがきっかけである。皇室の伝統やしきたりに慣れないことが、雅子妃の適応障害の原因であると推測され、事実、雅子妃は徐々に各種行事などの公務に復帰されつつあるが、この5年間、宮中祭祀には一度も参加されていない。
宮中祭祀が適応障害の原因とする説にはそれなりに信憑性があるのは事実だが、だからといって、廃止するというのは本末転倒と言わざるを得ない。国民の雅子妃への同情心を利用し、病気を人質にとり、天皇制崩壊を目論んでいるかのようである。
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