防雨ミサイル、報道規制、軍隊出動──
厳戒と虚飾の祭典「五輪開会式」で中国13億人のナショナリズムが炎上する
2008年5月19日(月)0時0分配信 SAPIO
掲載: SAPIO 2008年5月14日号
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文=西村幸祐 (戦略情報研究所客員研究員)
中国が世界覇権に向けたプロパガンダの集大成と位置づけている北京五輪の開会式。大半がベールに包まれたままだが、着々と準備が進められていることは間違いない。チベット騒乱で先進国首脳のボイコットが相次ぎ、肝心の聖火すらリレーが妨害に遭う現状のなか、いったいどんなイベントとなるのか。シミュレーションした。2008年8月8日午後8時8分。総工費約35億元が費やされた巨大スタジアム「北京国家体育場」、通称「鳥の巣」の上空は、前日までのスモッグと悪天候が嘘のような星空であった。
紅色一色に彩られた会場内には「スリラー」や「ウィー・アー・ザ・ワールド」のプロデュースで知られる作曲家クインシー・ジョーンズの手による音楽が鳴り響き、開会を記念する1000人規模の武術演舞が披露される。スタジアムを埋め尽くすのは、地元北京はもちろん、中国全土から集まった観客たち。中国映画界の巨匠チャン・イーモウの華麗な演出に彼らの拍手が鳴りやむことはない。さすが「上海ルージュ」など「紅3部作」で知られるチャン監督だけに、中国の象徴たる紅色を基調に鳳凰文様、吉祥雲などの文様が随所にちりばめられ、幻想的なムードを作りあげている。
続いて登場したのは色とりどりの衣装に身を包んだ各地の少数民族の人々。チベット族はもちろん、ウイグル族や蒙古族……。さらにパンダやチベット・カモシカをモチーフにしたマスコットたちも会場を盛り上げる。
まさに舞台芸術と呼ぶにふさわしいスタジアムを眺める胡錦濤以下の中国政府首脳たち。念願の五輪開催にこぎ着けた彼らだが、その表情は少し複雑にも思えた。彼らが時々目をやる会場の上段に設けられた貴賓席。そこではスーダン、ジンバブエといった彼らが長年にわたって支援を行なってきた発展途上国と北朝鮮の首脳たちがにこやかに拍手を送っていた。しかし、イギリス、フランスなどG7首脳たちの姿はない。ただ、福田総理だけが、こちらも複雑な表情で開会式を眺めていた。
そして選手入場。
各国の国旗を掲げた選手団が入場行進を始める。行進が、中国政府首脳たちの前にさしかかった時、選手の何人かがポケットから取り出した布を大きく広げる。風にたなびく雪山獅子旗とともに連呼される「FREE TIBET!」のシュプレヒコール。胡錦濤らは、それをただ眺めることしか出来なかった。もちろん、開会式の模様は中国全土のみならず世界中へ生中継されていた。ところが、そうした各国選手団の姿はまったく映し出されることはなかった。
そしてクライマックスの聖火点火。中国の伝統思想「天人合一(人の行為は天に通ずる)」を象徴する、最終聖火ランナーが掲げた炎が天井付近にとぐろを巻く巨龍の体に移り、最後に龍が吐きだした火球が聖火台に火をつける演出で聖火が灯される。ただし、その聖火は幾度とないリレー妨害による消火ですでにその価値を失ったものであったが。
そして、会場を一歩離れた北京の街では、あちこちに警官や人民解放軍の装甲車が配置され、それはまるで戦時下の様相を呈していた……。
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