「地球温暖化の救世主」なんて大嘘だ
8億台の車を走らせて8億人を飢えさせる バイオエタノール燃料という名の怪物
(SAPIO 2008年6月28日号掲載) 2008年7月7日(月)配信
トウモロコシは食糧として使用する方がムダがない
そもそもバイオエタノールは、二酸化炭素の排出を削減し、温暖化を止める「環境にやさしいエコ・エネルギー」ということで注目を集めた。しかし、バイオエタノールで二酸化炭素排出が減るというのはまったくのデタラメである。
バイオエタノールが「環境にやさしい」というのは、カーボン・ニュートラル≠ニされているからだ。カーボン・ニュートラルとは、実質的に二酸化炭素をほとんど出さないという意味。穀物は二酸化炭素を吸収して生長するが、自動車が穀物原料のエタノールで走り、二酸化炭素を排出しても、再び穀物を栽培する過程で吸収されるので、実質的に二酸化炭素を出していないというゼロサム論≠ナある。
しかし、この論には重大な見落としがある。穀物を栽培するにはエネルギー(石油)が必要だという点である。
もともと農業は農地に種をまき、水と太陽エネルギーと少量の肥料で植物を生長させるが、現代では、省力化と農地の有効活用のため、農地に大量のエネルギーを投入して収穫を最大化させる。そのエネルギーとは、トラクターなど農業機械の燃料や石油を原料とする化学肥料・農薬などである。
では、どれぐらいの石油を投入して、どれぐらいの穀物が採れるのかというと、さまざまな研究調査があり、実は判断の難しいところではあるが、アメリカの穀物栽培の場合、カロリーベースで比較するとおおむね1対1程度といえる。つまり、農地に投入した石油とほぼ同じエネルギー量の穀物しか取れない。これが日本の場合だと、農地が狭く、農業従事者の高齢化で農業機械への依存度も高いため、3対1ともっと効率が悪い。
さらに収穫したトウモロコシからエタノールを製造するには、でんぷんを糖化し、発酵させ、蒸留して脱水するという工程を経る必要があり、当然、ここでもエネルギー(石油)が消費される。
投入した石油より少ないエネルギー量のエタノールしか製造できないのだから、石油は石油として、トウモロコシは食糧・飼料として消費する方が無駄がない。現状では、石油と穀物をただ浪費しているだけで、省エネにも二酸化炭素排出削減にもなっていないのである。
もう一つのバイオ燃料大国ブラジルの場合は、糖分を多量に含み、少ないエネルギーでエタノールを作れるサトウキビを栽培できるため、エネルギー収支はプラスになっていると考えられる。
しかし、問題はブラジルで普及しているフレックス車というシロモノである。フレックス車はガソリンでもバイオエタノールでも走れる自動車だが、燃料の質が安定していないという前提では、エンジンの設計が大雑把になるので、非常に燃費が悪い。つまり、バイオエタノール製造でエネルギー収支がプラスでも、燃費の悪い自動車で走ることで、プラスが打ち消されてしまう。
これがバイオエタノールという怪物の正体である。しかし、餓死者が増えようが、エネルギーの浪費になろうが、どんなに批判されても欧米諸国は増産を続けるだろう。彼らの目的は環境対策などではないからだ。真の目的は別のところにある。
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