「地球温暖化の救世主」なんて大嘘だ
8億台の車を走らせて8億人を飢えさせる バイオエタノール燃料という名の怪物
(SAPIO 2008年6月28日号掲載) 2008年7月7日(月)配信
日本がなすべきは二酸化炭素の削減ではない
アメリカのトウモロコシ農家は、収穫した後、穀物市場の価格とバイオエタノール工場の買い取り価格を比較して、高い方に出荷する。原油価格が上がればバイオエタノール工場に、穀物価格が上がれば穀物市場にトウモロコシが集まるわけだ。これにより、今まで別個に市場価格を形成していた食糧価格と原油価格が連動するしくみができあがった。穀物でエネルギー市場に影響を与えることが可能になったのである。
日本の穀物自給率が著しく低いことは周知の通りだが、欧米先進国のなかには穀物自給率が100%を超えている国が多い。トップがオーストラリアで333%、フランスは173%、アメリカ132%となっている。アメリカの場合、自給率の数値は高くないが、人口が多く生産規模が大きいので、余剰分の絶対量が多く、アメリカの穀物の力は圧倒的である。
その一方で、経済発展が著しい中国やインド、ロシアは穀物自給率が100%を割り込んで、食糧輸入国に転じつつある。
つまり、欧米先進国は穀物の余剰分をバイオエタノールに変えて、エネルギー市場に影響を及ぼし、中国、ロシア、インドなどの新興勢力を牽制できるのである。アメリカはこれまで持っていた軍事、政治、ドル、そしてアラブとともに進めていた石油に加えて食糧という第5のパワーを手に入れた。
お人好しな日本人は、二酸化炭素の排出削減のために欧米諸国がバイオエタノールを導入したと信じているが、そもそも京都議定書を批准して、二酸化炭素の排出削減を約束したのは、世界中で日本だけである。アメリカは批准せず、日本と同じく削減目標を負ったカナダは離脱した。ヨーロッパ諸国やロシアは、自国の基準値を低く設定することに成功し、削減どころか実質的に増大枠を確保した。
欧米先進国は、ルールを決めたらそのルールの範囲内で自国に有利な結果を導きだすことしか考えていない。バイオエタノールは京都議定書でカーボン・ニュートラルと定義されたのだから、最大限に利用して、排出権取引で利益を出し、さらにはエネルギー市場に影響力を持とうとしているのだ。
日本がすべきなのは、二酸化炭素の削減方法を考えることではなく、日本の得意分野をどう活用すれば有利な立場に立てるかを考えることだ。例えば、自動車や家電製品などで、基準値より燃費がいい、消費電力が少ない製品を販売したら、その分をカウントするよう交渉する。バイオエタノールより現実に削減効果があるのだから、認められて当然である。外交交渉次第だろう。
将来の食糧難の時代を見据えて対策を立てる必要もある。国土の狭い日本は、農業で世界と戦うのは不可能だが、200カイリ経済水域は約451万㎢あり、世界第6位に位置する。同じ太陽エネルギーの量で、陸の生物(植物など)と海の生物(プランクトンや海藻など)が生産するグルコース(ブドウ糖)の量を比較すると、実は海の生産性は陸の約15倍である。日本人は、海を積極的に活用することで生き残る道が拓ける。
必要なのは発想の転換だけである。
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