漁船沈没事故の背景にたび重なる台湾漁船の領海侵犯・不法操業がある
日中台「尖閣領有紛争」をカードに馬英九が画策する東シナ海「実質支配」シナリオ
(SAPIO 2008年8月6日号掲載) 2008年8月8日(金)配信
文=山田吉彦(東海大学准教授)
6月10日、尖閣諸島周辺で起きた海上保安庁の巡視船と台湾漁船の接触事故が、思わぬ展開を見せている。馬英九・台湾総統は「尖閣の領有権」を主張、抗議のデモ船が組織され、台湾駐日経済文化代表処の許世楷代表を召還、辞任させた。尖閣海域に、何が起きているのか。山田吉彦・東海大学准教授が、事件の深層を探る。
単なる「操船ミス」がなぜ政治問題となったか
馬英九政権の誕生は、日本の海上安全保障体制にとって新たな悩みとなった。
かねてから海上保安庁では、台湾のコーストガードにあたる海岸巡防署との関係構築を求めている。日本と台湾との間では外交関係がなく、当然、海保と海岸巡防署との間でも正式なルートでの交渉はない。しかし、昨年、日台海上安全フォーラム(主催・海洋政策研究財団)が開かれ、民間ベースによる海上安全に関する協力が、ようやく動き出していた。
海上保安庁にとって、台湾と境界を接する海域は、海上警備の盲点になっている。
日本の国境線の海上警備状況を見ると、中国との間では、東シナ海のガス田開発、尖閣諸島の領有権問題などがあり、怠りは許されない。対馬海峡から日本海にかけては韓国漁船の密漁、竹島領有権問題、北朝鮮対策があり、海保は、最新の船艇と精鋭部隊を投入している。北海道沿岸部では、北方領土問題を抱え、2006年8月に根室の漁船がロシアの警備船から銃撃を受け船員が死亡する事故が起こるなど、常に緊張状態にある。
それに比べ、台湾との境界海域の警戒は、フィリピンルートなど南方からの銃器や薬物の密輸を防ぐ上で重要ではあるが、これまで紛争を抱えていないため、警備が手薄になっていた。というより、他の海域に船艇と人員をとられ、手が回っていないのが実情であり、台湾との協力関係は必須なのだ。
ところが、いまこの関係に異変が起きようとしている。
さる6月10日、午前3時すぎ。日本の領海である尖閣諸島・魚釣島の南方約10qの海域で、第十管区海上保安本部の巡視船「こしき」(966t)が台湾の遊漁船「聯合」と接触し、漁船が沈没する事故が起きた。
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