ソウル市「合法化宣言」で大過熱
動物愛護か食文化保護か韓国「犬肉食」大論争
(SAPIO 2008年8月6日号掲載) 2008年8月11日(月)配信
文=窪田順生(ジャーナリスト)
グローバリズムと食文化は否応なく齟齬を生むものだ。その象徴が、日本では鯨であり、韓国では犬である。 日本固有の食文化である鯨食については、反捕鯨運動の高まりを受け国際論議も平行線を辿ったまま。一方、鯨以上に国際世論の反発を受けてきた犬食だが、ここにきて韓国では、行政側が「堂々と犬食を認めよう」と合法化を打ち出したというのだ。 韓国人にとって犬肉食とは何か。現地レポートする。
狭い檻の中には、10匹以上の犬が身を寄せ合っていた。そこへ注文を受けた主があらわれ、針金の輪がついた棒を檻に差し込んで犬の首に通そうとする。悲鳴をあげて所狭しと逃げ惑う犬たち。しばらくして1匹の犬の首に針金が食い込む。生け簀の魚のように檻から釣り上げられた犬が咆哮をあげて激しく身をよじると涎が周囲に飛び散った。必死に踏みとどまる犬を店の奥まで引きずると、主は黒い棒をとりだして首にあてた。四肢を異常なまでにぴんと突っ張った次の瞬間、その犬はくたりと床に倒れこんだ。
ソウルの隣、城南市にあるモラン市場のなかには、犬の肉や犬の丸焼きを店頭に並べ、注文があればこのような生きた犬を殺して売る店が集まった犬市場≠ェある。
「今は電気ショックで殺していますが、かつては棒で殴って殺した。死ぬ時に恐怖を感じさせた方が肉がうまくなるといわれていたからです」(犬肉卸業者)
ご存じの方も多いと思うが、韓国には犬を食う習慣がある。といっても、その辺を散歩しているペットや野良犬を捕まえて鍋にぶちこんだりはせず、「犬牧場」で食用として育てた「雑犬」と呼ばれる国産種を食材としているのだ。なかでも人気はセリやネギとともに唐辛子や山椒のスープで煮込む「補身湯」という鍋料理。その字面からも連想できるようにこれは韓国人にとっての健康食品の意味も強く、日本の鰻のように暑い夏を乗りきるスタミナ食≠ニして親しまれ、ソウル市内では専門店は500軒をゆうに超えているという。
ところが、そんな国民的料理にもかかわらず、材料たる犬肉は都市部のスーパーや肉屋では買うことができない。韓国では犬は「保護動物」という位置づけで、牛や豚のような「食肉用畜産」ではないからだ。なんともややこしい話だが、彼らにとって犬は国民的食材でありながら、法律上では食肉ではないという奇妙な二重構造になっているのだ。
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