世界で暴れ回る投機マネーを生み出した「金融偽装」技術
刷り過ぎたドルを世界に撒き散らすデリバティブは米国製大量破壊兵器だ
(SAPIO 2008年8月6日号掲載) 2008年8月18日(月)配信
文=伊藤博敏(ジャーナリスト)
本来、実体経済を補完するはずが、実体経済を歪め、振り回しているだけと批判が多い金融資本主義。「証券化」「レバレッジ」など数ある金融技術の中でも、「デリバティブ」は最も悪名高い錬金術である。いまや6京円以上の市場規模を誇るその存在感は、投機マネーが跋扈する世界経済の現状を如実に表わしている。著名な米国投資家をして「大量破壊兵器」と呼ばしめる、「偽りの金融工学」の正体を剝ぐ。
洞爺湖サミットでも話し合われた世界の食糧危機は、経済のグローバル化が進展するなか、経済成長を続ける中国やインドの需要が拡大する一方、投機資金が原油や食糧に流れ込んで顕在化した。
飽食の国と飢餓の国との落差は激しいが、この二極化は世界の隅々を覆っている。
資源、技術、資産を持つ国と持たざる国との格差が広がるだけでなく、その国の内部にあっても優勝劣敗の法則は行き渡り、富者はますます富み、貧者はぎりぎりの生活を余儀なくされている。
食糧危機と二極化ともに資金余剰を背景にした金融資本主義がもたらした。それは、1980年代に顕著になった鉄鋼、自動車など主軸産業の衰退に代えて、金融を中核に据えた米国の政策転換を起点としている。
この成熟国家アメリカの国家戦略は、1980年代末からのソ連・東欧の崩壊によって完成領域に達し、「資本主義の勝利」は、グローバル資本主義をさらに推し進めた。また米国は、基軸通貨の強みを生かして赤字や不況にドルの印刷で対応、溢れたドルが世界にバラ撒かれた。
余剰資金を裏付ける数字がある。世界のGDP(国内総生産)に対する世界の金融資産の割合は、1980年の109%から05年には316%に増加した。この10年で世界経済の成長率は4%を切る水準だが、世界の株式時価総額は2桁の伸びが続いている。
規制緩和で企業活動の自由度を究極にまで高め、不況などには通貨供給量の調整で対応する新保守主義を理論的支柱に、80年代以降の米国は、金融資本主義を完成させていった。そこには前述の「資本主義の勝利」に加え、ITを軸にした情報通信革命があり、それを背景にグローバル化は加速していった。
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