演説力を徹底比較
麻生、小沢には真似できない「マァ、そのお〜」角栄節の秘密=東照二
(SAPIO 2008年12月17日号掲載) 2008年12月22日(月)配信
文=立命館大学教授 東照二
「マァ、そのお〜」と声を張り上げ、独特な口調で多くの聴衆を惹きつけた田中角栄。同じ「ダミ声」「庶民口調」でも、麻生首相の演説はどこか違う。一方、次期政権を目指す小沢一郎は自称、話下手ときている。海の向こうでは、巧みな演説で聴衆を魅了した新大統領が誕生する。「ことばは人を動かす」。言語学者の東照二氏が三者のスピーチ術を分析する。
麻生太郎にあって、田中角栄になかったもの。それは、大いなる「勘違い」である。
つまり、麻生は決意、情熱をもって政治に取り組んでいるかのようだが、それはことば戦略という観点からみると、大きな勘違いのもとに始動しているということだ。さて、その勘違いとはどういうものか、これを理解するためにうってつけの材料が田中角栄のスピーチ術ということになる。
ことばで人を惹きつけるには、大きく2つの方法がある。1つは、自分が有能で信頼されるに足る人物であるということを聞き手にはっきりと伝える方法だ。これは、話し手が自分の能力(経験、知識など)を前面に押し出していくという点で、話し手中心の「力」にもとづいたことばの使い方だといえる。もう1つの方法は、自分の「力」を主張していくのではなく、聞き手との心理的距離感を少なくし、親しみ、つながり、共感といった「仲間意識」を盛り上げていく方法だ。
さて、それではこの2つのスタイル、どちらが効果的なのだろうか。答えは、ズバリ、どちらも必要なのである。首相は一国のリーダーである。「力」のことばを駆使し、明快に力強く国民に語りかける必要がある。それと同時に、聞き手との「仲間意識」を育むことばを使いながら、「共感」、「つながり」を生み出し、国民を魅了し、鼓舞していかなければならない。
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