いまだ脱皮できない主権なき同盟関係
「親米」に溺れず「反米」を煽らず 江藤が説いた「他者としてのアメリカ」=遠藤浩一
(SAPIO 2009年7月8日号掲載) 2009年7月23日(木)配信
文=遠藤浩一(評論家・拓殖大学教授)
江藤淳が自死して今年で10年になる。夏目漱石の研究など戦後を代表する文学評論家であった氏は、同時に一級の保守論客としても知られた。戦後民主主義の虚偽と欺瞞の構造を見出し、あくまで「戦後」と「日本人」を問い続けた氏。その批評は、今日においてもいよいよ時代の肯綮に当っている。いまあらためて「江藤淳が2009年の日本に言い残したこと」を問う。
***
江藤淳ほど、日本の対米依存を自覚した評論家はいない。だからこそ彼は、親米反米のいずれにも与せず、日米関係の適切な距離感を思索しつづけてきた。
没後10年、国際情勢の多極化、金融資本主義の破綻を経てもなお、アメリカを客観視できない日本。氏の言葉は、残念ながら些かも古びていない。
五月二十七日夜、一片の文書がホワイトハウス記者会に提示された。そこにはジョン・ルースなる人物の名が、次期駐日大使候補として記されていた。なんでもバラク・オバマ大統領の選挙戦を資金面で支えた弁護士だとかで、日本との接点がほとんどないばかりか、政治家としても外交官としても手腕が未知数の、有り体に言ってしまえばズブの素人が同盟国の大使に指名されたわけである。十六日に新中国大使としてユタ州のジョン・ハンツマン知事(共和党、マケイン選対の共同委員長)の起用を大統領自らが発表したことと比較すると、日本も軽くあしらわれたものだなァという印象は否めない。
江藤淳だったらこの有り様を見て何と言うだろうか? 同盟国への配慮の欠如に腹を立ててみせるだろうか。それとも日米同盟の変質を見抜いて警鐘を発するだろうか。あるいはこれを機により進化した日米関係の構築をめざすべきだと説くだろうか。
バックナンバー記事
- 「スタジオの華」は邯鄲の夢 女子アナ下流時代がやってきた (SAPIO 2009年11月23日(月))
- 相次ぐ訴訟に隠蔽工作文書まで流出「JAPANデビュー」問題の収拾困難=井上和彦 (SAPIO 2009年11月19日(木))
- 「記者クラブ開放」に反対する新聞・テレビはいったい誰の味方なのか=上杉隆 (SAPIO 2009年11月16日(月))
- 日米のグリーンを席巻する韓国女子プロゴルファーの「芳しくない評判」=鵜飼克郎 (SAPIO 2009年11月3日(火))
- 新聞・テレビが報じない新型インフル 「本当は恐ろしい話」=油井香代子 (SAPIO 2009年10月29日(木))
