「天皇ご即位」から20年
日本人が忘れつつある「仁」と「義」の心を変わらず体現されている今上陛下=津川雅彦
(SAPIO 2009年8月19・26日号掲載) 2009年9月10日(木)配信
文=津川雅彦(俳優・映画監督)
子供の頃から皇室に敬意を抱き、演劇界や映画界の「反天皇」思想は貧しいと話す津川雅彦氏。皇族との交流のエピソードも披露しながら、即位20年を迎えた今上天皇について語る。
磨かれ秘められた極上の品
2006年に紫綬褒章を賜ったとき、初めて皇居で今上陛下にお目にかかった。私たち受章者の目をいちいちご覧になり、にこやかな会釈を頂いた。会う人間の経歴をしっかりとご記憶なさるそうだ。あのときの陛下の目も「あなたのことは知っていますよ」と優しく語りかけていた。
私はこれまで時の総理やハリウッドスター達とも逢って来たが、陛下にお目にかかったときの感動とは比べものにならない。「磨かれ秘められた極上の品」を感じることが出来た。
私は、大数学者岡潔先生(1901〜78年)の『情緒の教育』で「仁義」について教わり感銘を受けた。岡先生曰く桜が咲くと、美しいと愛でる。いつまでも咲いていて欲しいと願う。この心が「仁」。その桜が散らなければ夏は来ない。夏の緑が紅葉に色づけば秋。葉が散って冬。「他」の季節のために自らを変化させる心が日本の四季を産む。それが「義」だと……。
「仁」「義」「礼」「智」「信」の五常を最も体現なさって来たのが、天皇家である。自己を抑制し、常に国家と国民の安寧の為に尽くしていらっしゃる心が幾百年の時を経て発酵し、優雅な「品」となり滲み出て居る。
日本国憲法は残念ながら狩猟民族に作成され、個人の権利を第一に謳ってしまっている。日本人は農耕民族だ。一粒の米を個人の権利に帰趨することは不可能と知っている。故に和を伝統的に大切にする。和とは人と人の間、つまり「人間」の権利を第一とすることだ。和の最小単位は家族だ。日本人の優れているのは家族の上に「公」を置き、家族より重んじ、これを徳と称えた事だ。
「カツドウヤ」の家系に生まれ育ち、子どもの頃から舞台や映画に出演していた私は、「親の死に目に会えない」職業であると教えられた。芸の世界でも「私」を捨て「他」を喜ばす事に「プライド」を置く。
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