【ドロップアウト】Vol.8 金古聖司 南国で再起を図る“超高校級”と言われたDF
(Sportiva 2009年7月25日掲載) 2009年8月5日(水)配信
高校サッカーで鮮烈な印象を残し、“黄金時代”に飛び級で加わった男がいた。あれから10年、彼は見知らぬ土地で、そのイメージと戦っていた。
Sportivaオリジナルのノンフィクション
小宮良之●取材・文
「僕はプロサッカー選手ですよね?」
南国特有の雷雨が、何かを訴えかけるように激しく地面を叩くと、たちまちアスファルトに水溜まりを拵(こしら)えた。短気で飽きっぽい雨雲が15分足らずで立ち去り、入れ替わるように灼熱の太陽が顔を出す。太陽は雨雲の尻ぬぐいでもするように地上を乾かし、辺りにはうんざりするような熱気と湿気が充満した。赤道近くに位置し、年中高温多湿のシンガポールという国で、それはありふれた光景だった。
2009年春。短パン、Tシャツ姿の彼は自転車で練習場へ向かうところだった。
「中学の部活かよ」。自分に突っ込みを入れながらペダルを強く踏み込むと、噴き出してきた汗で洗い立てのシャツがぐっしょりと濡れた。マイカーを持たなかったのは暮らし始めて間もないのもあったが、自動車税が目をむくほどに高く、自転車で十分事足りたからだ。試合の日は自宅近くの停留所でバスを捕まえて集合場所に向かう。日本では思いもしなかった交通手段ばかりだが、「これも経験」と開き直っていた。
ただ試合後に疲れた体で停留所で佇(たたず)み、帰りのバスを待つ時間は急に不安になり、無性に誰かに確認したくなる。
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