打線のキーマン、小谷野は走攻守で奮闘。そのパワー恐るべし [ 拡大 ]
日本シリーズ第4戦(4日、東京ドーム)で日本ハムは、小谷野栄一内野手(29)の3安打4打点の活躍、先発した八木智哉投手(26)の5回1失点の粘投で巨人に8−4で圧勝。対戦成績を2勝2敗に押し戻した。今季開幕時の支配下登録選手の平均年俸(日本プロ野球選手会調べ)が12球団中8位に過ぎず、抜群の費用対効果を誇る強さの秘密は、この球団の類まれな補強戦略にある。
【大学野球随一の練習量と厳しさ】
日本ハムの先発・八木が驚異的な粘りを見せた。いきなり1回無死一、二塁の絶体絶命危機から小笠原、ラミレス、亀井のクリーンアップを打ち取ったのをはじめ、5回までなんと毎回先頭打者の出塁を許したが、失点は3回の1点のみ。
すると味方打線は3回、4番・高橋の先制2点タイムリーに続き、小谷野が右中間へ2点二塁打を放ち、小谷野は本塁送球間に猛烈なヘッドスライディングで三塁まで奪って、チームのムードを一気に盛り上げた。
「創価大コンビで活躍? 実はそこが一番うれしい。来年はまたもう1人入ってきますしね」。試合後に小谷野が満面笑みで明かした。
この日そろって殊勲者となった八木、小谷野、今季は1軍出場3試合に終わった4年目の高口隆行内野手(26)の3人が創価大出身。さらに10月29日のドラフト会議で同じ創価大の大塚豊投手を2位指名した。また、創価大・岸雅司監督(54)の長男、七百樹氏(28)もサブマネジャーを務めている。
球界では、選手の供給元が特定の学校や組織に偏ると、妙な横やりが入りかねないものだが、日本ハムはそういったことには構わず、シンプルに使える選手、素質のある新人を集める方針。そうでなくては、これだけの費用対効果は望めない。
それどころか、過去に他球団でスキャンダルを起こした選手、素行を問題視され他の球団が二の足を踏んだ高校生なども敢然と獲得し、その上で確固たるチーム方針に従うことを求めている。
「創価大出身の選手は、それ以外の選手の見本になるくらいよく練習する。そういう共通点は確かにある。きっと岸監督の教育が良いのでしょう」と日本ハムの球団幹部は続けた。実際、創価大は亜大と並び大学球界随一の練習量、厳しさで知られている。
「何しろ全寮制で、タバコ、車の運転は厳禁。それを破って退部処分にになった者もいるほど。携帯電話の使用は午後10時半までで、それ以降は寮長管理下のロッカーに預けなくてはならないのです」(岸七百樹サブマネ)という、今では前時代的とも聞こえるスパルタ方式の中で4年間を過ごす。「みんな野球エリートというわけではないですから、それくらいでないとうまくならないんですよ」とは、2002年ドラフト5位入団から主力へはい上がった小谷野の弁だ。
【野球人生の危機乗り越え】
ちなみに、タレントの押切もえとの破局が話題になった巨人・野間口貴彦投手(26)は、同い年の八木と同時に創価大へ入学したが、厳格すぎる部の雰囲気になじめなかったためか、1年の春季リーグ戦終了後に早々と退学して社会人のシダックスへ転じ、04年ドラフトの自由枠で巨人入りしている。この日は7点ビハインドで迎えた8回途中から5番手で登板したが、アマ時代の評判からすると、やや伸び悩んでいる。
小谷野と八木のコンビは、野球人生の危機にひんした点でも共通している。
小谷野は3年前に2軍で、パニック症候群で打席に入ろうとすると吐き気を催し、たびたび嘔吐するという症状を克服した。八木は06年にシーズン12勝を挙げて新人王に輝いたが、左肩痛などで2年間鳴かず飛ばず。ようやく今季9勝3敗、防御率2.88で復活のきっかけをつかみ、自身にとって3年ぶりの日本シリーズ勝利に結びつけた。
1発大当たりで一躍有名になるチャンスもあり。さまざまな因縁、人間模様が交錯するのも日本シリーズの楽しみである。(宮脇広久)