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情報システム

「消費者をファンにするマーケティングを」――ローソンエンターメディア 日比靖浩社長

2009年11月4日(水)8時30分配信 ITmediaエンタープライズ

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好調なチケット販売業界において、ぴあに次ぐ業界2位の売り上げ規模をほこるローソンエンターメディア。マイケル・ジャクソンの映画チケット販売の工夫など消費者の心をつかむマーケティング戦略を聞きました,写真:ITmedia [ 拡大 ]

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 エンターテインメント産業は不況に強いと言われます。ハリウッドの映画産業は大恐慌時代に、安価な娯楽として人々の間に浸透し成長しました。今回の不況の一人勝ち(二人勝ち?)は、ゲームとホームビデオ。ホリデーシーズンに家族旅行に行くことを考えれば、家庭内娯楽の方が安く人気だったようです。

 さて、日本では? 家庭内娯楽にとどまらず、現在、約2000億円という市場規模のチケット業界が好調です。ぴあ、ローソンエンターメディア、エンタテイメントプラス、CNプレイガイドの大手4社の合計が昨年対比で伸びています。例えば、ローソンエンターメディアのチケット取扱高は、2009年度2月期は730億円と前年の21.2%増となり、営業収入も69億6000万円から76億2000万円にと、コンサートや演劇などに消費者の嗜好は強かったようです。

 今回の対談では、ローソンエンターメディアのマーケティング本部長から今年5月に代表取締役社長に就任した日比靖浩さんがユニークな顧客接点を持つ同社の強みと成長戦略を語ってくれました。ユニークなのは、会社だけでなく、ご本人も。興行や野外コンサートにも自ら足を運んで培う日比さんのマーケティングの勘所をふんだんに楽しんでもらいたいと思います。

●チケット販売はプラットフォーム事業

 ローソンエンターメディアは、今年7月にローソンチケットから会社名を変更、3月にアイ・コンビニエンスと合併し、チケット事業からEコマース事業と広告マーケディング事業、サイト制作、運営事業へと事業領域を拡大しています。

 競合との差異化では、全国のローソンに設置されているチケット端末「Loppi」でチケットの購買をできるのが特徴です。ほかのコンビニエンスストアもこのシステムに追随していますが、ローソンが先行したことで、ローソンに行くとチケットが買えるというブランドイメージが消費者の間に浸透しています。歴史的に見ると、最初のチケット販売は電話やプレイガイドでしたが、1990年代にインターネットの採用と同時期にLoppiを導入、当時はインターネットがまだナローバンドだったために、Loppiが売り上げで先行しました。

 最近では携帯を含むインターネットでの購買が増え、チケット販売の割合は、電話3割、Loppi4割、インターネット3割になってきたようです。いわば、豊富な顧客接点を提供するプラットフォームを強みにしていると言えるでしょう。

●合併効果を追う

 消費者は、顧客接点となる端末を意識して使い分けることはしません。興行主との間でも、どの端末を通じてチケットを販売するかを常に話し合っています。「ローソンネットショッピング」を提供していたアイ・コンビニエンスを合併したのは、消費者がチケット販売の端末を使い分ける時代に、その相乗効果を狙いたかったからです。

 インターネットやモバイルでのチケット販売も同じ会社が受け付けることにより、ITとマーケティングとコンテンツの3つの基本機能を持つようになりました。コマース事業を取り入れたのは、チケット販売で培ったアーティスト関連の事務所やプロモーターなどの人脈を通じて、取り扱い商品やマーチャンダイジングを広めることができるからです。

 この合併のおかげで、ローソンチケット会員に向けて、アイ・コンビニエンスの商品を推薦できるようなりました。ローソンチケットではアーティストでフックがかかっています。アーティストが新譜を出すときに、商品案内を同時に出すという動きができるようになりました。

●消費者のファン化を促すマーケティング

 チケットという商品で気を付けたいマーケティングの考え方は、アーティストと商品とのひも付けができても、アーティスト同士のひも付けは難しいということです。それは、アーティストに対するファンのスティッキネス(粘着度)が強すぎるからです。

 マーケティングの歴史的な変遷は、まず、マスマーケティングから始まります。大量生産したものをマス流通を通して販売します。ここではマス広告を使うのが一番効率がよく、効率を最大化するマーケティングと言えるでしょう。しかし、消費者の嗜好が多様化するにつれ、ターゲティングメディアが発達し、少ロットの生産が定着してきました。顧客接点は、ダイレクトメールやEメールなどが使われ、CRM(顧客情報管理)というマーケティング手法で適切なオファリングによる個々の顧客との関係強化がされるようになりました。そこでは、アーティストと商品というようなクロスセルやアップセルも可能です。

 最近、最も新しいマーケティングの考え方は、エンゲージメントマーケティングです。これは、消費者をファン化することにより商品との関係をよりさらに強化するものです。チケットの消費者はアーティストにこだわります。福山雅治さんは世界に一人しかいません。ファンのスティッキネスも強く、ほかのアーティストとのクロスセルはほとんど考えない方がよいでしょう。さらに、そんなファンにとっては、ある日の福山雅治さんのライブはやはり世界に1つなのです。つまり、場やアーティストの気分が違う1つ1つのライブがファンにとっては違う商品なのです。だから、メールマガジンや会報誌という顧客接点の使い方は、クロスセルではなく、ライブ情報をもれなく多くのファンの方々に提供することが大切です。

 そのために、ファンクラブの運営をローソンエンターメディアに任せる動きも盛んです。コンサートやライブのチケットはまずファンクラブの会員を中心に販売され、その後一般のチケット購買者に販売します。そのファンに対してグッズの販売も行います。ファンクラブの運営をローソンエンターメディアが担えば、一連のオファリングがスムーズにいくという仕組みです。

●既存資産の活用

 インターネットが登場して以来、既存資産としてのコンテンツの活用が叫ばれていますが、その活用方法は知恵を絞ればインターネットに限るものだけではありません。ローソンエンターメディアでは、ODS(Other Digital Stuff)という、コンサートやイベントなど、従来の映画の枠にとらわれないコンテンツの映像化や映画館での放映という方法で既存資産活用を行うようになりました。通常、コンサートは1回限りなので、そのコンテンツの二次利用として、すでにDVDでの販売は一般化しています。しかし、考えてみれば、ライブは大きな施設で皆で見るものです。

 ローソンエンターメディアでは、自宅のリビングで一人で見ると相場が決まっているDVDへの利用とは別に、その臨場感に着目して映画館で上映するという活用法があってもいいはずと考えます。その第1弾として、配給先のTOHOシネマズと組み、ハイビジョンでエリック・クラプトンとジェフ・ベックのライブ映像を上映することを決定しました。映画館の稼働率は約20%と言われ、劇場側の施設をもっと有効利用したいという要求ともマッチし、単価を2800円で上映する試みがなされています。

 宣伝は、マス広告を利用する映画ビジネスと異なり、濃いファンに対するアプローチとしてメールやインターネットという広告媒体を中心に使っています。将来は、アーティストやファンクラブと一緒にODSを普及させ、コンサートを生中継する計画も実現したいと、日比さんの事業計画は広がります。

 ソニーピクチャーさんともODS推進では協力関係にあります。10月末から期間限定で公開されるマイケル・ジャクソンのドキュメンタリー映画のチケット販売では、プレミアムチケットを発行することになりました。1300円の前売りチケットにシリアルナンバーを入れ、さらに将来とっておきたいと思わせるようなデザインを施したチケットを2枚組2600円でインターネットにて販売します。

●店舗さえも媒体化

 新しい媒体として注目したいのは、ローソンという店舗です。現在、ローソンでは、ローソンエンターメディアが発行するフリーペーパー「月刊ローソンチケット」を置いています。店頭に張られている4枚のポスターのうち1枚はローソンエンターメディアのチケット情報用に使われています。この店舗を媒体化する動きはさらに盛んになっています。店舗を商品などの告知媒体として利用しコマースを活性化する、店内放送で音楽を流し記憶してもらってダウンロードを促進するなど、日比さんのアイデアは尽きることがありません。

 こうして1日900万人前後が訪れるローソンという店舗を顧客接点としていきます。このように店舗を媒体とすると、全国に行き渡る顧客接点が出来上がり、しかも、物理的なこの媒体はローカルな情報にも強い媒体となります。ローソンにとってもエンタメ関連の情報や商品とのコラボレーションは集客面で効果的なはずです。

 インターネットが登場し、どんな会社が勝つかという問い掛けに対し、わたしは常に既存資産を持ち、それを活用できる会社と答えています。ユニークな顧客接点を持つローソンエンターメディアの将来性を大いに感じたインタビューでした。【石黒不二代(ネットイヤーグループ)】

(ITmedia エグゼクティブ)








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