Webマーケティングの弱点を克服するウィジェット
2009年11月5日(木)8時0分配信 ITmediaエンタープライズ
ウィジェットと企業の関係性,写真:ITmedia [ 拡大 ]
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ウィジェットを駆使したWebマーケティングやプロモーションは、そんな現状に一石を投じる手法になり得る。ウィジェットが「個人と企業をつなぐメディア」としての特性を備えているからだ。既存のWebマーケティングとは一線を画す特性を持つ「ウィジェットマーケティング」を、成功事例を交えて紹介する。
●ウィジェットが誕生したいきさつ
インターネットが定着してから約15年が経ち、インターネット上での企業のマーケティング活動を指すWebマーケティングという言葉も定着してきた。特に、自社のWebサイトや登録制のメールマガジンを使った「Pull(ユーザー主導)&Push(企業主導)」は、Webマーケティングの代表的な手法となっている。
ただし、インターネットの世界では日々技術革新が起き、それがネットマーケティングにも変化を及ぼしている。例えば2005年末に突如現れた「Web2.0」という概念は、Webマーケティングの新たな潮流をもたらした。
Web2.0は、ブログやSNSなどのCGM(ユーザー参加型メディア)、Web上の情報を効果的に流通させるRSSやXML、検索エンジン経由で消費者と企業の出会いを演出するSEO(検索エンジン最適化)などが普及した。そしてウィジェットもまた、この技術革新の中で生まれた産物なのである。
これらの技術革新に共通するのは、技術やサービス面の普及が利用環境の拡大と利用者の開拓をもたらしたことだ。これは技術革新とともに生まれる進化の1つであり、Webマーケティングにおける「常識」を覆した。
1.CGMの接触頻度が着実に向上
日本広告主協会・ウェブ広告研究会の調査結果によると、2006〜2007年にかけて、ブログやSNSなどのCGMのページビューは2倍に増えた。家庭にあるPCからインターネットを利用する総時間のうち、25%程度がCGMの閲覧時間に当たることも分かった。これは、個人同士が情報を共有する生活スタイルが、ブログやSNSを通じて定着してきたことを表している。
この生活スタイルの変化は、企業にとって脅威となった。自社サイトから発信した情報が、消費者には届きにくくなっていることが表面化してしまったからだ。
2.Webマーケティングの指標が「利用時間」に
Nielsen Onlineのインターネット利用動向調査「NetView」で興味深い調査結果が出てきた。日本における2008年4月のWebの総利用時間は前年同月比で18%増だが、1人当たりの月間平均ページビューは、4年前の2004年とほぼ同水準に低下しているのだ。
Webマーケティングを実施する企業は、消費者が情報に接触する頻度や時間を強く意識しないといけない。Webマーケティングの正確な成果は、もはやページビューだけでは測れなくなっている。
3.届かないメールマガジン
エイケア・システムズが2006年に発表した調査では、オプトインされたメールマガジンの6割以上が迷惑メールと誤判定されていることが明らかになった。
これは、インターネットサービスプロバイダーが提供するセキュリティプログラムやセキュリティーソフトによる迷惑メールフィルタが影響している。そのためメールマガジンを配信する企業は、こうした誤判定が起きていることに気付かない場合が多い。換言すると、企業が駆使する従来のWebマーケティングでは、消費者に情報を届けきれないということだ。
ウィジェットは個人とつながる企業メディア
企業は、消費者とインターネットの活用形態の変化に合わせて常に新たなWebマーケティングの手法を模索し、消費者とつながる「タッチポイント」を自ら構築していかなければならない。
その可能性を秘めているのが、ウィジェットである。SNSやブログと連携しやすく、PC端末にも常駐させられるため、密度の濃い情報を届けやすい。ウィジェットは企業と消費者(顧客)の橋渡しをするツールなのだ。
ウィジェットを介して、企業と消費者個人がつながる――。これはウィジェットが「個人とつながる企業メディア」であることにほかならない。この特性をWebマーケティングに転用する「ウィジェットマーケティング」は、効果的な情報伝達を実現できる新たな手法といえよう。
●「漢検DS」が65万本を売り上げた理由
ここからは、ウィジェットマーケティングの成功事例を見ていきたい。ロケットカンパニーはブログパーツ(ウィジェット)を用いたWebプロモーションを取り入れ、ゲームソフト「漢検DS」の売り上げを65万本にまで伸ばした。
Webプロモーションの目的は、漢検DSの認知度を拡大すること。ブログパーツを一人でも多くの消費者に配布することを視野に入れ、次の3つの要素を取り入れたブログパーツを意識的に作成した。
1. 体験――ブログパーツ上でゲームを体験できる環境を忠実に再現
2. 参加――都道府県別に対抗させ、結果を表示することで、参加欲と競争意識の醸成を演出
3. モチベーション――販売サイトへのリンクとアフィリエイト連携によるユーザーへのベネフィットの提供
また、ブログパーツを消費者に届けるための「環境作り」に注力している点も独特だ。12月12日の「漢字の日」に合わせて、「日本人の漢字力低下」というニュースリリースを配信。タイムリーな情報と漢検DSの特性が伝わり、テレビや新聞など40のメディアが記事やニュースとしてこの発表を取り上げた。
一連のWebプロモーション活動は、「漢字力」という言葉に対する消費者の意識を高めさせた。この活動が呼び水になり、漢検DSのブログパーツは徐々にブロガーに認知されていった。そして関連するブログ記事が多数執筆され、「漢字力」は口コミで一気に広がった。
結果としてこのプロモーションの効果は、(1)関連するブログ記事を1万人以上が執筆、(2)ブログパーツの総露出数は8000万インプレッション、(3)ブログパーツ経由で漢検DSのゲームを15万人以上が体験――という数字(『出典:コミュニケーションをデザインするための本』)が証明する。
そして漢検DSは、65万本を売り上げるヒット作になった。ブログパーツ単体だけでなく、メディアを巻き込んだWebプロモーション活動が奏功したからだ。ブログパーツの利用者が増え、口コミでさらに情報が拡散していく。ロケットカンパニーの取り組みは、「消費者による自律的な情報流通網の構築」へとつながっていった。もちろん、成功の裏には簡単にゲームを体験・参加できる手軽さと、競争心をあおり結果を他人と共有したくなるコンテンツ(ブログパーツ)の特性や、個人のタッチポイントになるウィジェットの独特さが影響している。
ウィジェットマーケティングで陥りがちなのは、ウィジェットのコンテンツ作成に力を注ぐ半面、それを配布するための施策を十分に練らないことだ。漢検DSのブログパーツの完成度は高かったが、それを個人に広めるための情報流通網の構築にまで目を配ったことが、成功の要因だといえる。
とはいえ、ほかの企業がこのウィジェットマーケティングそのまま横展開しても、売り上げ増には結び付かない。消費者に届けたいメッセージやサービスの内容によって、その都度戦略を練っていくのがウィジェットマーケティングの肝だ。次回はウィジェットマーケティングを成功に導く「核」の要素を説明したい。【竹下直孝】