【週末美術館】枯れ蓮の美
2009年11月8日(日)14時0分配信 Record China
滅びゆくものの「残欠の美」を主題とした作品に打ち込んでいる女流油彩画家の李碧紅。そのインスピレーションは、極寒の雪の中で朽ちて行く蓮の姿を、移ろいやすい男女関係やはかない人間関係になぞらえた連作「都市の疎隔」に結実している。 [ 拡大 ]
-PR-
雪の降りしきる冬の蓮池に着想を得たという連作「都市の疎隔(城市的陌生)」は、冷たい雪に打たれ、みずぼらしくしおれた蓮の姿を描いている。盛夏には美しい花を咲かせたはずの蓮が、幾重にも絡み合いながら朽ちて行く様は、作者の愛する「欠落の美感」にぴったりそぐうもので、有機的な生々しさやえぐみすら感じさせる。
早朝に花開き、昼にはしぼんでいく蓮。空から降り注いでは、はかなく溶けゆく雪。その移ろいやすさを男女関係のメタファーにして表現しているという。生々しさやえぐみはここに起因するものだろう。年齢を重ねるにつれてさまざまな経験をし、臆病さや脆弱さが次第に心を侵食していく。そして互いに信頼しあうことが難しくなっていく男女関係。そのもろさ、はかなさは、すべての人間関係にも言えることだ。人とは最終的には孤独なもの。他人は所詮、永遠に他人同士のまま、完全に理解しあうことなどできない。ひと時は結ばれた縁も、ほどなくしてはかなくほどけていく。膨大な数の人々が交錯し、混じりあう大都市で、孤独な人々は永遠にすれ違いを続ける。雪景の蓮に作者が見た心象風景は、冬の寒さをますます増すようなものだった。(文/山上仁奈)
●李碧紅(リー・ビーホン)
1974年生まれ、湖北省監利県出身。女流油彩画家。湖北美術学院油彩画学部卒業。華中師範大学美術院で美術学の修士号を取得したのち、現在は湖北大学芸術学院の美術学部で教師を務める。代表作に「都市の疎隔」「眠りから覚めるとき」「荷狐」など。
※週末美術館では、中華圏のアーティストを中心に日本や世界各地の写真作品、美術作品、書道作品など様々なジャンルの作品をご紹介していきます。