カリブ海からサメやカマスが消滅
2009年5月11日(月)18時48分配信 ナショナルジオグラフィック
大型魚であるイエローフィン・グルーパーの若い個体がカリブ海を泳いでいる。この魚は無計画な乱獲の結果、この海域から姿を消しつつある。現地では状況を改善すべく、小規模漁業者を対象として、意識向上を目指したプログラムが実施されている。Photograph by Emma Hickerson/Flower Garden Bank National Marine Sanctuary [ 拡大 ]
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最も深刻なのはカリブ海で特に人口密度の高い国々の沿岸で、サンゴ礁を泳ぐ大型の捕食魚が根こそぎ釣られて姿を見せなくなっている。大型魚のいなくなった水域では小型の魚が増殖し始めており、サンゴ礁の環境が急激に悪化しつつある。
今回の研究は魚類の目撃情報を収集した公開データベースに基づくもので、訓練を受けたボランティア・ダイバーからの情報が蓄積されている。カリブ海の大型捕食魚の減少について包括的な見解を得るための情報源としては、現時点で最大級のデータベースの1つである。
「手つかずの健全なサンゴ礁の美観を維持して海産物を確保していくためには、大型捕食魚の存在が不可欠だ」と、研究の著者であるフロリダ州立大学沿岸海洋研究所のクリス・スターリングス研究員は語る。
この見解について、非営利団体ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)のリーダー、フィリップ・クレーマー氏も同意する。「大型の肉食動物は、生態系にとって不可欠の存在だ。例えば、オオカミで有名なアメリカのイエローストーン国立公園からオオカミが消滅すると、獲物であるシカにも影響が及ぶ。カリブ海でも今後、同様の連鎖的な反応が起きるだろう」。
スターリングス氏はカリブ海に生息する捕食動物について、大きさや個体数に差のある20種類を対象とした調査を実施した。
その結果、大型のハタやフエダイをはじめ、オオメジロザメ、イタチザメ、ヨシキリザメなどのサメ類が、アンティル諸島やジャマイカといった人口密度の高い地域にあるサンゴ礁で目撃されなくなっていることが明らかになった。この研究は「PLoS ONE」誌に掲載されている。
ハタはかつて、カリブ海のいたるところに生息していたが、激しい乱獲の末、国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種リストに掲載されるまで減少した。大型のハタが消えた海域には別種の魚が入り込んでいる。比較的釣りの対象になりにくいヘラヤガラ、ハタの中でも最小の部類に入るアカホシハタやコニー、小型のフエダイであるキセンフエダイやマホガニースナッパーなどが生息地を拡大していた。
「小型の捕食魚が増えると生態系に予測不可能な変化が起きるだけでなく、外来種の侵入を招く恐れもある」と、スターリングス氏は懸念する。例えば、近年、カリブ海には太平洋に生息するはずのミノカサゴが侵入しているが、これは水族館から放出された個体が、大型捕食魚の不在のために大繁殖したのである。
スターリングス氏は次のようにも指摘する。「カリブ海沿岸諸国で、大型魚の保護に重点を置いた厳格な漁業管理プログラムを実施している国はほとんどない。家族の食料やその日の生計を賄うための小規模な漁業が大半を占めるからだ」。
ネイチャー・コンサーバンシーのクレーマー氏によると、同団体では、「現地の人々に持続可能な漁業の大切さを身を持って体験してもらうため、漁業従事者の交換視察プログラムを始めている」という。
最近、その一環としてジャマイカの漁業従事者らがベリーズへ出向き、保護対策の施された捕食魚に富むサンゴ礁を視察した。「プログラムの成果は驚くほどで、漁業従事者の考えに大きな変化が生まれた。この変化を浸透させるには、地域社会レベルで働きかける必要がある」と、クレーマー氏は語った。
Christine Dell'Amore for National Geographic News
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