初期の銀河、存続の決め手は暗黒物質
2009年7月15日(水)9時27分配信 ナショナルジオグラフィック
ハッブル宇宙望遠鏡のデータで作成された巨大銀河団CL0025+1654の画像。オレンジ色の斑点は個々の銀河、青色に見えているのが暗黒物質。 初期宇宙では、大質量星が発する放射線が原因となって銀河の大量絶滅が起こった。2009年7月に発表された新型コンピューターモデルによると、一部の銀河が大量絶滅後も生き残ったのは、周囲の暗黒物質が保護盾となって放射線の影響を免れたためだったという。Photograph courtesy J.-P. Kneib (Observatoire Midi-Pyrenees, Caltech) et al., ESA, NASANASA [ 拡大 ]
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そのころ、若い恒星は暗黒物質の雲の中にある通常物質から作られていたが、それらの恒星からは周囲の銀河にダメージを与える放射線が放出されていた。
暗黒物質の雲は大きければ大きいほど、通常(可視)物質をより多く引き寄せていた。大型の銀河はそのようにして十分な物質を蓄えたため、近傍銀河で形成された恒星からのダメージを受けても存続できた。
その一方で小型の銀河は、恒星や恒星を形成する物質がすべて霧散してしまったと考えられている。残されたのは、何も生み出すことのない暗黒物質の塊だけだった。
研究チームのメンバーであるイギリス、ダラム大学の天体物理学者カルロス・フレンク氏は次のように解説する。「大量の暗黒物質を真っ先に蓄積した銀河が初期宇宙における強者となり、放射線を放出する恒星を形成して、弱者であるほかの銀河を滅ぼしてしまった」。
フレンク氏と筑波大学の岡本崇准教授が行った新型シミュレーションによると、ビッグバンによる銀河の大量絶滅後しばらくは、新しい銀河は形成されなかったようだ。
その一方で暗黒物質は集積と膨張を続け、より大きな構造体へと拡大していった。さらに時が過ぎて今から100億〜120億年前になると、いくつかの暗黒物質の塊は、生き残った銀河から放出される放射線に対抗できるほど大質量化していた。この時点で暗黒物質の雲は再び通常の物質を引き付けて蓄積するようになり、結果としてより大きな銀河が形成されることとなった。
このコンピューターモデルは、ロンドンで開催された英国王立協会・夏期科学展2009(Royal Society 2009 Summer Science Exhibition)で発表された。カリフォルニア工科大学の天体物理学者アンドリュー・ベンソン氏は、「このモデルによって、天の川銀河の“消えた衛星銀河”問題も解決されるかもしれない」と期待を寄せる。天の川銀河の衛星銀河の観測数が、シミュレーションの予測数と比べて極端に少ないことが指摘されている問題のことだ。
天の川銀河の衛星銀河はこれまで約20個しか確認されていないが、銀河形成の主要理論に従えば、数千個は存在するはずである。その理論では、天の川銀河のような大銀河は多数の矮小銀河を吸収して形成されるもので、取り込まれなかったその他の銀河は衛星銀河になると考えられている。
「しかし今回のコンピューターモデルが正しければ、天の川銀河の“消えた衛星銀河”など、始めから存在しなかったことになる」とベンソン氏は話す。「フレンク氏が示したように、初期宇宙で銀河が形成されていなかったとしたら、天の川銀河の衛星銀河の観測数が現状のように少なくても説明できる」。
Ker Than for National Geographic News
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