月面で初めて“用を足した”男
2009年7月17日(金)18時25分配信 ナショナルジオグラフィック
1969年7月24日、月から地球に帰還したNASAアポロ11号の3人の宇宙飛行士。左から順に、ニール・アームストロング、マイケル・コリンズ、エドウィン・“バズ”・オルドリン。空母ホーネットの上で、祝福に訪れた大統領リチャード・ニクソンに、収容された隔離用トレーラーの中から3人が笑顔で応える。Photograph courtesy NASA [ 拡大 ]
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今月で初の月面有人探査からちょうど40年がたつが、この節目に際して79歳のバズ・オルドリン氏も精力的な活動を展開している。月面歩行を振り返る回想録の出版や最新コミュニケーションサービス「Twitter」の活用など、あらゆる手段を通じて未来に向けたメッセージを伝えようとしている。記念すべき彼の「人類初」は、月着陸船のはしごを上っている最中、宇宙服の排尿用の袋に放出されたそうだ。
2007年制作のドキュメンタリー映画『ザ・ムーン(In the Shadow of the Moon)』の中でオルドリン氏は、「誰もが“初めて”を経験する。それが月の上なんだから尚更だよ」と語っている。
また、オルドリン氏が“二番目”に月面を歩いた人間であることにも異論の余地はない。アームストロング船長から遅れること約15分のことだったが、着陸船に戻るときにはかなりぎこちない動きをしており、いまでも少し恥ずかしく思っているという。
「はしごの一番下の段に足をかけようとしてジャンプしてみたんだが、最初は高さが足りなかった。それで、後ろに戻ってもう一度ジャンプしなければならなかったんだ」とオルドリン氏は説明する。
もちろん、オルドリン氏が伝えるのはドジやトイレの話ばかりではない。月の第一印象について尋ねられると、「月面は“壮大なる荒地(magnificent desolation)”で、空は“ベルベットのような輝き(velvet luminosity)”で満たされていた」と熱く語った。
また、アポロ計画の宇宙飛行士、アラン・シェパードとドナルド・“ディーク”・スレイトンが著した『ムーン・ショット(Moon Shot)』の中では、「月に降り立ったときは弾むような気持ちになり、全身に鳥肌が立った」とも話している。
しかし、オルドリン氏にとって月面歩行は単なる楽しい思い出だったわけではない。「数十年もの間、“月はどうだったか?”という同じ質問を繰り返されてきた。40年後のいまでも、質問者が何を求めているのかわからない。どんな答えを期待しているのだろうか」。
戦闘機パイロットとして21年の経験を持つ現実主義者のオルドリン氏に、ロマンチックな答えを期待する方が間違っているのかもしれない。
「あの事実をなぞるような話を作り上げようと思ったことはない。素晴らしいことだった? すごいことだった? いまだに言い表せる言葉がわからない」。
このように、彼は自ら認める“現実主義者”だが、月面歩行という偉業の輝かしい一面にも目を向け、最新技術にも取り組んでいる。若い世代に自分の経験を伝えるためだ。
オルドリン氏はアポロ計画後に一時、アルコール依存症とうつ病を患ったが、立ち直ってからは自分の経験を後世に伝えていく決意を固めた。「このまま深い闇の中へと沈み続けていくのか。それとも今までの経験を無駄にせず前向きに生きる努力をするのか。苦悩の末に答えが見えてきた」とオルドリン氏は話す。
それからは、あらゆる手段を可能な限り駆使してメッセージを発信していくことが、オルドリン氏の使命の1つとなった。果敢にもイギリスのコメディアンキャラクター“アリ・G”が司会を務めるニセのトーク番組に出演したり、アメリカの著名ラッパー、スヌープ・ドッグとラップに挑戦したこともある。自身が運営する非営利教育機関シェアスペース・ファンデーション(ShareSpace Foundation)を通じて、科学教師たちとの共同作業プロジェクトも進めている。
彼は“ポスト宇宙時代”のコミュニケーション様式にも順応している。「Twitterというコミュニケーション手段をみんなが使っているのを知って、やり方を教わったんだ」。Twitterは極小サイズのブログ型Webサービスである。
現在、オルドリン氏のTwitterをフォロー(登録)している人の数は12万人以上に上っている。ごく最近では、新刊の回想録『Magnificent Desolation(壮大なる荒地)』の紹介が同時進行で進められていた。
Twitterへの書き込みとして、例えば7月8日の“つぶやき”は次の通りだ。
「今日はインタビューをたくさん受けた。Boingboing.netというWebサイトのものもあったが、どうやらガジェットサイトというものらしい。初めて聞いた。 バズ」。
オルドリン氏のメッセージには、どんな願いが込められているのだろう。彼は次のように話す。「私の経験を聞いたアメリカ人が、再び月を目指す気になってくれたらうれしい」。例えばそんなことだ。
「アメリカは再び人類を月に連れて行くだろう。そしてさらに。火星やその彼方に」。
Anne Minard for National Geographic News
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