アポロから40年、月は誰のものか
2009年7月22日(水)9時1分配信 ナショナルジオグラフィック
1969年7月20日、地球帰還を目指して上昇中のアポロ11号着陸船。ドッキングを待つ司令船から撮影された。 人類初の月面着陸から40年。“月の不動産業者”は出現したものの、月の所有者はいまだ明確になっていない。Apollo 11 photograph courtesy NASA [ 拡大 ]
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アポロ11号から40年。月の所有権を主張し、自らを“銀河系政府”初の暫定大統領と称するネバダ州ルナエンバシー社のCEOデニス・ホープ氏は、月をはじめとする数々の惑星の土地を販売してきた。これまでの顧客数は約370万人にのぼる。
ホープ氏によると、顧客の増加に伴い、月の所有権保護を望む声が出てきたという。そこで同氏は2004年、憲法や議会を持つ“政府”を立ち上げ、貨幣を発行し、特許庁まで設立した。
しかし、オランダに拠点を置く国際宇宙法学会(IISL)の理事長ターニャ・マッソン・ズワーン氏は、「月やその他の天体、資源の所有は法的には一切認められていない」と指摘する。「ルナエンバシーは月の所有権など販売していない。“権利書”と銘打った紙を客に渡しているだけだ」。
1980年、ホープ氏は月の権利宣言書を国連に提出したが回答がなかったため、主張は受理されたと判断した。
ホープ氏によれば、月はヘリウムの同位体が豊富で、その価値は1オンス(約28グラム)あたり12万5000ドル(1000万円超)にもなるという。ルナエンバシーが販売した土地は100万ヘクタールを越え、購入者の名前が印刷された月の土地権利書は22.49ドル(税別)でネット販売されている。
「国連が回答しなかったのは、そうするまでもなかったからだ」と、法律の専門家らは反論している。1967年に発効した宇宙条約によって月の領有は禁じられているためだ。この条約は現時点でアメリカを含む100カ国によって批准されている。
しかしホープ氏は、この条約の抜け穴を見逃さなかった。宇宙条約は「国家」による領有は禁じているものの「個人」による所有については明言していないため、同氏は「個人」として月の所有権を主張したというわけだ。
だが、銀河系政府を所有し月に関する法的権限を持っていると主張する同氏は、果たして現在も「個人」なのか。この問いに対しても、「国連加盟国ではないのでこの条約から制約を受ける義務はない」と反論している。
「国家であろうと個人であろうと、ホープ氏が主張した月の所有権は完全に違法だ」とIISLのマッソン・ズワーン氏は言う。「宇宙条約は、当然国民にも適用されるはずだ。ホープ氏は月をはじめとする天体を所有することはできない」。
しかし、それでも月で巨万の富を築く道が絶たれるわけではない。「土地を所有していなくても利益を得ることはできる。必要なのは、宇宙ビジネスに関する法的枠組みを明確にすることだ」とマッソン・ズワーン氏は述べている。
1984年には国連による月協定が発効し、月における天然資源が利用可能となった場合には、ホテル建設や天然資源採掘など、月におけるさまざまな商業活動に明確な規則が適用されることになった。
ただし協定の批准国は、発効後25年を経た現在でも、実際に宇宙開発を行っていないチリやフィリピンなど13カ国のみに留まっている。
非営利団体“ムーン・ソサエティ”の代表ピーター・コフ氏は、「月に関しては当面の間、国連主導で管理を行うべきだ。現在、国際宇宙ステーションの開発では各国が協調して作業している。これと同様な形をとるのが望ましいだろう」と述べている。
マッソン・ズワーン氏もコフ氏と同意見だ。月面基地の建設は各国の協同プロジェクトであるべきだと考えている。
一方のホープ氏は、月における自治政府の樹立に向けて着々と準備を進めているようだ。同氏は政府の代表者として、「許可なしに月へ侵入することを禁ず」とする通達を諸外国に送ったという。
また、発行した通貨“デルタ”の承認をめぐり、国際通貨基金とも衝突している。それでも同氏は次のように主張している。「銀河系政府が目指しているのは、他国から孤立することではない。われわれには敵意も悪意もない。仲間として認めてほしいだけだ」。
Victoria Jaggard National Geographic News
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