サンゴと共生する褐虫藻に“眼”を発見
2009年7月29日(水)19時23分配信 ナショナルジオグラフィック
カリブ海に浮かぶボネール島の沖で2007年8月に撮影されたサンゴの1種、“イボヤギ”。燃えるような鮮やかなオレンジ色だ。 海には固いサンゴの内部を住処とする単細胞の藻類が生息している。サンゴ礁が鮮やかな色彩を放つのは藻類のお陰だが、この植物に関する興味深い研究が発表された。なんと、“眼”があるかもしれないというのである。Photograph by David J. Phillip/AP [ 拡大 ]
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褐虫藻の内部には役割の判明していない結晶様の沈殿物が存在するが、今回、その成分が尿酸であることが確認された。昆虫や動物の眼の、光を反射する部位に共通の成分である。研究チームによると、これまでこの物質は多くの植物に含まれているシュウ酸カルシウムだと考えられていたが、それは誤認だという。
研究に参加した広島大学の小池一彦准教授は、電子メールを通じた取材で次のようにコメントしている。「研究室の実験で、褐虫藻の結晶塊が光を強く反射していた。つまり、実質的に眼として機能しているということだ」。
この単細胞生物は光を受容する分子も持っており、それが単純な構造の視覚器官である「眼点」を形成している。眼点は光を知覚するが、ほかの藻類やクラゲなどの単純な生物もこの器官を使って周囲の状況を察知している。
小池氏によると、褐虫藻が属する渦鞭毛藻(うずべんもうそう)類の中には、眼点を持つ単細胞の水生生物がほかに4種類いるという。
しかし今回発見された眼点は新しいタイプのもので、サンゴと共生する生命体に特有のものだと同氏は考えている。
褐虫藻と造礁サンゴポリプは、世界各地の水深の浅い熱帯海域で進化しながら、共生関係を築いてきた。サンゴ礁は褐虫藻に安全な自然の生息場所と光合成の材料を与える一方、褐虫藻はサンゴ礁に酸素と必要な栄養素を供給し、不要物の除去も行っている。
「両者の共生関係の重要性を考えると、放浪中の褐虫藻は眼点を使って最適な住処を探しているのかもしれない。それが事実であれば非常に面白い」と小池氏は言う。
逆にサンゴの幼体は、未知の“誘引メカニズム”を使って褐虫藻を住処に引き付けている可能性がある。同氏はこう続ける。「サンゴと共生する藻は、住処を探している間だけ眼を利用しているのではないか。宿主の中に入り込むと視力を失うのかもしれない」。
これに対し、ミル貝に寄生する藻類は、宿主の中にいる間も眼のような器官を維持し続けるという。その理由を小池氏は、ミル貝に寄生する藻類は宿主から逃げる必要もあるからだと考えている。ミル貝は藻を“栽培”し、その一部を毎晩食べる習性を持っているためだ。
「サンゴと褐虫藻の共生メカニズムが解明され、その知識を多くの科学者と共有できれば、気候変動が原因で進行しているサンゴの減少を食い止めることもできるかもしれない」と小池氏は言う。
海水温が上昇すると、サンゴは共生している褐虫藻を排出する傾向がある。結果としてサンゴは白化し、栄養不足からやがて死に絶えていくことになる。「共生関係がどのようにして築かれるのか。そのメカニズムをなるべく早く解明する必要がある」と小池氏は力説する。
この研究成果は、7月17日発行の「PLoS One」誌に掲載されている。
Christine Dell'Amore National Geographic News
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