イヌの家畜化、東アジア起源説に疑問
2009年8月4日(火)16時8分配信 ナショナルジオグラフィック
アフリカ大陸各地から集められたさまざまなイヌのDNAを調べた結果、「家畜犬の起源は東アジア」とする説に疑問が投げ掛けられることになったという。2009年8月、科学者がそう発表した。写真は南アフリカ原産の原始犬“アフリカニス”のオス。撮影場所は南アフリカのセントフランシスベイ。Photograph courtesy David Malan [ 拡大 ]
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多くの科学者は現在、DNA分析により、イヌは1万5000年〜4万年前にユーラシア大陸のハイイロオオカミから進化したと考えている。しかし、イヌが家畜として飼われるようになった経緯は依然として不明点が多い。
2002年、世界中から数百頭のイヌが集められ、DNAが調査された。その際、他地域に比べて東アジアのイヌにより大きな遺伝的多様性が確認された。イヌは東アジアに起源を持つと考えられるようになったのは、この研究が原点である。遺伝的多様性の最も大きい地域でオオカミからイヌへの種分化が起こったと考えるのが自然だからだ。
アメリカにあるコーネル大学の生物学者アダム・ボイコ氏は、「2002年の研究で集められた東アジアのイヌには、繁殖犬とほぼ同数の土着犬が含まれていた」と話す。
繁殖犬には純血種と雑種がある。土着犬とは特定地域に固有の犬種のことで、その土地や気候にあった犬がそれぞれの地域に、または活躍分野に存在している。研究チームは、「繁殖犬には、現代の犬種を特徴づけている人為的な厳しい選抜と限られた範囲での交配が行われてきたが、土着犬についてはそれほどではなかった傾向が強い」とも説明している。
今回の新しい研究でボイコ氏の研究チームは、アフリカ全土から集めた土着犬と繁殖犬、プエルト・リコの野良犬、そしてアメリカの雑種犬についてDNA鑑定を行ったが、アフリカと東アジアの土着犬同士では遺伝的多様性に違いは見られなかったという。
とはいえ、「アフリカにはハイイロオオカミがいないため、“家畜犬の起源はアフリカ”という結論にはならない」とボイコ氏は指摘する。ただし、2002年の研究で提示された東アジア説の根拠に疑問の余地が生まれたのは間違いない。
「今回わかったのは、土着犬の方が繁殖犬より遺伝的多様性が大きいのかもしれないということ。だからといってすぐに東アジア説が消えるわけではない。今後、起源の謎を解明するには、ヨーロッパ、中東、そして東アジアの土着犬からも遺伝子サンプルを入手する必要がある」とボイコ氏は言う。
イヌが家畜化された時期と場所が特定されれば、イヌのDNAを糸口に、初期人類の移住パターンや人口推移を解明できる可能性があるという。「なんと言っても、イヌはアメリカ大陸やポリネシアの島々にも人類と一緒に渡っているのだから」と同氏は話す。
今回の研究成果は、今週発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載されている。
John Roach for National Geographic News
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