天敵を使った害虫駆除、豊かな環境が鍵
2009年8月13日(木)18時43分配信 ナショナルジオグラフィック
ブロッコリーの害虫ダイコンアブラムシを食べるハナアブの幼虫。 ハチ、ハエ、テントウムシといった害虫を捕食する昆虫を農場におびき寄せ、作物被害に対する強力で持続可能な武器として利用する動きが出始めている。Photograph courtesy Rebecca Chaplin-Kramer [ 拡大 ]
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ただし、環境に優しく持続可能な防除法も存在する。害虫を喜んで食べるハチやハエ、テントウムシといった捕食動物だ。科学者や農家はこの強力な武器をもっと有効に活用しようと、農場環境を見直している。害虫を捕食する動物にとって豊かな生息環境を作り、農場を住みかにしてもらうことが狙いだ。
8月2〜7日、アメリカ南西部のニューメキシコ州アルバカーキでアメリカ生態学協会(ESA)の年次総会が開催された。カリフォルニア大学バークレー校の博士号候補生レベッカ・チャップリン・クレイマー氏は数年間にわたる生物的防除の研究成果を発表した。
同氏によると、捕食動物の生息を促進しても、殺虫剤としての効果がすぐ表れるわけではない。しかし、有力な捕食動物が永久に繁栄できるため、持続可能性の高い手段になり得るという。
研究の対象にはダイコンアブラムシが選ばれた。ブロッコリーの害虫で、ハナアブの好物でもある。
まず作物と生け垣や雑草が混在する実験農場を用意し、捕食昆虫を引き寄せるため、花壇や下生えまで作った。ブロッコリーのみを植えた農場もしつらえ、害虫駆除の効果を比較した。
ただ、害虫駆除における環境の役割を定量化する手法はやや手の込んだものになった。特定の“農場”のアブラムシの数は、天候の変化を始めとするさまざまな要因によって変化するためだ。ある農場の害虫レベルが低い場合、捕食昆虫が抑制した結果なのか、単に姿を見せないだけなのか判断ができなかったという。
そこでチャップリン・クレーマー氏は、50匹のアブラムシが付いたブロッコリーの株を2種類のケージに入れ、一方は開放して捕食昆虫の出入りを自由にし、もう一方は捕食昆虫が入れないようにした。この2種類のケージを、純粋な自然環境から、作物と生け垣などが混在する農地、作物のみの農地まで、さまざまな環境に配置した。
その結果、農場の周囲にある自然が多様で捕食昆虫が繁栄していると、害虫駆除の効果が大幅に高まることが示された。周囲にそうした環境がなくても、多様性のある農場を作ることで大きな効果が得られることもわかった。
「農業シーズンの前期では、純粋な自然環境では農地の約5倍の害虫駆除効果が発揮された。後期になる頃には、農地同士でも大きな差が出た。混在農地では作物のみの農地の4倍以上の効果が現れた」と同氏は言う。
カリフォルニア州で農園を営むフィル・フォスター氏は、チャップリン・クレイマー氏の研究に協力した1人だ。フォスター氏は通常30〜40種類の作物を栽培している。さらに輪作を行い、捕食昆虫が好む生け垣も設けている。「農業のシステム全体が非常に重要だとわかった。有機栽培を始めて20年目になるが、学ぶことはつきない」とフォスター氏は語った。
アーカンソー州ティラーで綿を栽培するスティーブ・スティーブンス氏は有機栽培は行っていないものの、害虫駆除に関しては自然環境に頼っている。「殺虫剤は本当に必要になるまで控える。有益な虫をできるだけ長く守りたいんだ」。
スティーブンス氏にとって、捕食する昆虫は害虫の薬剤抵抗性を予防する1つの手段だという。「殺虫剤を過剰に使い続けても切りがない。虫たちが抵抗性を獲得する恐れがあるからだ」。
アーカンソー大学で昆虫学を研究するロバート・ウィーデンマン教授によると、殺虫剤の限界により生物的防除に注目が集まっているという。「ただし、生物的防除が全面的に受け入れられているわけではない。普遍的な知識がまだ確立していないためだ。簡単に理解できてすぐ使えるような技術ではないため、限定的な利用にとどまっている」と同氏は指摘した。
ただし、同氏は次のようにも述べている。「将来の総合的な害虫管理は、それが本当の意味で総合的になれば殺虫剤のみに頼るものではなくなる。対症療法的な方法では問題は解決できないだろう」。
Brian Handwerk for National Geographic News
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