暗黒エネルギーを不要とする新理論
2009年8月19日(水)17時49分配信 ナショナルジオグラフィック
ハッブル宇宙望遠鏡では、宇宙の果てにまで広がる無数の銀河を詳細にとらえることができる。上の写真はその中の1枚。 およそ10年前に提唱された暗黒エネルギーによって、銀河が加速しながら互いに離れていく理由が明らかになった。しかし2009年8月、宇宙膨張の加速は幻であり、暗黒エネルギーはもはや不要な理論となる可能性があるとの研究結果が発表された。Picture courtesy NASA/JPL/STScI Hubble Deep Field Team [ 拡大 ]
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この研究に携わった2人の数学者によって、アインシュタインが一般相対性理論の中で導き出した、重力と物質の関係を記述する場の方程式に対する解が提示された。
我々の銀河系は広大な宇宙空間に内包されており、ビッグバン後に発生した波動によって宇宙物質が押し流されたことで、その宇宙空間は極めて低密度になったという。そのため、系外銀河は銀河系から想定以上の遠方に位置している、というのが新理論の考えだ。
この研究に携わったカリフォルニア大学デービス校のブレイク・テンプル氏は、「われわれの解が正しければ、暗黒エネルギーを持ち出さなくても宇宙膨張の加速について説明することができる」と話している。
暗黒エネルギーの存在を否定するこの仮説を賞賛する声も聞かれるものの、現代の宇宙論を根本から覆すものであり天文学者らに受け入れられるのは難しいだろうとの指摘もある。
1998年までは、ビッグバンによって始まった宇宙膨張は減速していると考えられていた。
しかし同年、2つの研究チームが「宇宙膨張は加速している」との研究結果を発表した。両チームはそれぞれ、遠方の超新星が想定よりも暗く見えることを発見した。つまり、宇宙に働く力が重力だけであると考えた場合の予測よりはるか遠くに超新星が位置していることがわかったのだ。
この観測結果を説明するため、反発する重力として宇宙を膨張させている暗黒エネルギーの存在が天文学者らにより提唱された。その後10年以上が経過したが、暗黒エネルギーの正体も、そもそも実在するのかどうかさえ依然として解明されていない。
そこで提唱されたのが、「銀河系は、膨張する低密度のさざ波の内部に存在している」という新理論だ。テンプル氏とミシガン大学のジョエル・スモーラー氏は、このようなさざ波が形成されたメカニズムを解明しようと試みた最初の人物だ。
両氏は、“密度波”と呼ばれる大規模なさざ波をビッグバンが生み出したプロセスについて、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌で説明している。この初期宇宙のさざ波が宇宙全体に広がっていった際、数千万光年の範囲にわたって低密度のさざ波が残された。これが現在の銀河系を内包しているという。
一方で宇宙物質は低密度のさざ波によって押しやられ、海辺の砂のように移動した。このようにして移動した物質が、後に恒星や系外銀河を形成した。これらの天体は、地球からは想定よりも暗く見える。密度波によって押し流されたため、実際は地球よりはるか遠方に位置しているからだ。
1998年の観測で超新星が遠方に位置していた事実は、この理論によって説明がつくと同氏らは述べている。
しかしこの仮説は、広く一般的となっているコペルニクスの原理と相容れないものでもある。コペルニクスの原理では、宇宙における物質はすべて本質的には同質であり、銀河系は特別なものではないとされている。
しかしスモーラー氏とテンプル氏による今回の研究では、この原理は考慮されなかった。さざ波の内部の物質は、外部の物質よりも著しく低密度であるはずだというのがその理由だ。ただし両氏は、ビッグバンの密度波が生み出したさざ波がいくつもあったとすれば、コペルニクスの原理と矛盾しない理論モデルも可能だと付け加えている。
ミシガン大学の宇宙物理学者ドラガン・ハッテラー氏は、「暗黒エネルギーの存在は数多くの観測によって確かなものになりつつある。この事実を説明できなければ、この新理論がまともに取り上げられるのは難しいだろう」とコメントしている。
たとえその課題を乗り越えたとしても、宇宙に特別な場所はないというコペルニクスの原理を覆す考えが多くの研究者にとって受け入れ難いのは間違いない。今回の仮説に関しては、事実として証明される可能性は極めて低いという見方が優勢のようだ。
Ker Than for National Geographic News
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