パリ、セーヌ川に戻ってきたサケ
2009年8月25日(火)15時5分配信 ナショナルジオグラフィック
1世紀に及ぶ汚染から回復したセーヌ川にタイセイヨウサケが戻ってきた。2009年8月のフランス政府当局の発表によると、街中を流れるこの川を再び多数のサケが遡上しており、その数は予想をはるかに超え、1000匹を上回るという。写真はカナダのケベック州の川で撮影されたサケの姿。Photograph by Paul Nicklen/NGS [ 拡大 ]
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今年は1000匹以上のタイセイヨウサケ(アトランティックサーモン)がパリを流れる河川を遡上した。フランス全国釣り連盟幹部のベルナール・ブルトン氏はメールでの取材に対し、「予想以上の結果だ」と回答している。
セーヌ川もかつてはサケが豊富に生息する河川であったが、19世紀後半からの水質汚染により、そのほとんどが死滅していった。サケは現在、欧州連合(EU)がまとめる絶滅危惧種リストに記載されている。
そこで有害物質にまみれたセーヌ川を浄化すべく、25年前から取り組みが続けられてきた。その結果ついにセーヌ川は以前の水質を取り戻し、サケたちは年1度の産卵のため、約150キロ離れた大西洋からこの川へ戻り始めたのである。
サケは1900年にはセーヌ川から姿を消し、1920年にはほかにもほとんどの魚が死滅していった。前出のブルトン氏によると、「1995年まで、サケをはじめ年間300〜500トンもの魚がセーヌ川で死んでいた」という。1995年には、パリをすみかとする魚といえば、コイやウナギといった水質汚染に比較的強い魚が5種のみとなっていた。
それが、浄化作戦が功を奏し、現在のセーヌ川には32種もの魚が生息するようになった。「タイセイヨウサケが再び姿を現すようになったのは、水がきれいになったことを示す一番の“生きた証拠”だ」と同氏は話している。
カナダのニューブランズウィック州に拠点を置くタイセイヨウサケ連盟(Atlantic Salmon Federation)の広報担当スー・スコット氏は、メール取材に対して次のように語る。「パリにこれほどたくさんの野生のタイセイヨウサケが戻ってきたとは本当に驚いた。タイセイヨウサケの生息地としては南にあたるフランスは、最も顕著な減少が見られていた地域なので、なおさら驚きだ。北アメリカ大陸でもカナダ南部やアメリカ東北部のメーン州、コネチカット州などでサケが絶滅の危機に瀕している。こうした地域にとっても希望の持てるニュースだ」。
花の都パリに魚が戻ったというニュースには、この都市で“ストリートフィッシャー”とも呼ばれる、キャッチ・アンド・リリースを楽しむ釣り人たちも喜んでいる。
フランス政府によると、パリの名所近くで釣り糸をたらす彼らの熱意は高まり、流行にまでなりつつあるという。セーヌ川の水質改善が奏功して、ストリートフィッシャーのなかには体重30キロを超えるコイを捕まえた者もいるといわれる。
とはいえ、タイセイヨウサケがパリのビストロで“本日のお薦め料理”として登場するまでには至っていない。それが実現するにはまだまだ数が少ないのが現状だからだ。しかしブルトン氏はその日の到来を夢見て次のように話す。
「10年以内には、セーヌ川の中州に立つノートルダム大聖堂やエッフェル塔の近くで釣り上げられたサケを食べられる日がきっとやって来るだろう」。
Christine Dell'Amore National Geographic News
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