巨大コールドスポットの存在に疑問
2009年9月24日(木)16時34分配信 ナショナルジオグラフィック
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の温度地図に存在する異常に冷たい領域“コールドスポット”(青い部分)をとらえた2枚の画像。CMBはビッグバンの名残といわれている。左はNASAのウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機(WMAP)、右はニューメキシコ州にある超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)が撮影した。 コールドスポットについてはこれまで謎のスーパーボイドや平行宇宙の痕跡といった説が唱えられてきたが、2009年9月に発表された研究によると、単なる統計上の虚構であり、とりたてて特別な存在ではないという。Illustration by Bill Saxton, NRAO/AUI/NSF, NASA [ 拡大 ]
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しかし今回新たに発表された分析結果によると、コールドスポットは単なる統計上の虚構であり、特別な存在ではないという。「今回の発見で、コールドスポットの存在を根本から考え直さざるを得なくなった」と、研究に参加したアメリカにあるミシガン大学のドラガン・ハッテラー氏は話す。
同氏とその同僚レイ・チャン氏は今回の研究に当たり、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の温度地図を調べ直した。CMBはマイクロ波の拡散放射であり、ビッグバンの名残といわれている。この地図によると、CMBの平均温度は約2.7ケルビン(摂氏約マイナス270度)である。ところにより若干暖かかったり冷たかったりする小さな領域があるが、その差はマイクロケルビン(100万分の1ケルビン)に満たないわずかなものだ。
しかしCMBの温度地図が作成された当初の研究で、平均温度より約70マイクロケルビン低い異常に低温な領域がエリダヌス座の方向に発見された。宇宙でここだけ温度偏差が非常に大きいのだ。これは衝撃的な発見だった。ビッグバンで作られた初期宇宙は基本的に均一だったというのが通説だったからだ。
コールドスポットに関しては、CMBを吸収する巨大なガス雲、あるいは物質の存在しないぽっかり開いた宇宙の穴といった見方や、かつてわれわれの宇宙と平行して存在していた別の宇宙の痕跡という説さえ発表されている。
しかしハッテラー氏とチャン氏はいま、それらの学説をくつがえそうとしている。コールドスポットは、CMBデータの調査で一般的に使われている統計手法の副産物であると彼らは考えているのだ。それは、球状メキシコ帽型ウェーブレット(Spherical Mexican Hat Wavelets)と呼ばれる手法である。
Webサイト「arXiv.org」で発表された今回の研究では、もっとシンプルな2通りの統計手法が採用された。そして分析の結果、コールドスポットで確認されたCMB平均からの温度偏差は、宇宙のほかの領域と大差ないことが判明したのである。
しかし、スペインにあるカンタブリア大学の天体物理学者パトリシオ・ヴィエルバ氏は、「コールドスポットは異常な領域である」という考え方を変えず、次のように主張している。「統計手法の精度にはばらつきがある。球状メキシコ帽型ウェーブレットと違い、今回採用された手法は単純すぎるため、CMBの温度揺らぎを正確には調べることができない」。
さらに同氏は次のように例を挙げて説明している。「CMBの暖かい領域や冷たい領域が丸みのある形状をしている場合は、メキシコ帽型の方が検出しやすい。また、複数の異なるスケールでCMBを調べる際にもメキシコ帽型の方が高精度だ」。
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