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海外総合

二足歩行が人類の配偶関係を変えた?

2009年10月2日(金)17時50分配信 ナショナルジオグラフィック

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 人類最古の祖先のものと思われる全身骨格の化石が発見された。440万年前に生きていたラミドゥス猿人(アルディピテクス・ラミドゥス)で、愛称を“アルディ”という。上図中央に描かれているのはアルディの骨格であり、両脇のシルエットはチンパンジー(左)とアファール猿人(右)である。アファール猿人(アウストラロピテクス・アファレンシス)とは、有名なルーシーの骨格で知られるようになった人類初期の祖先である。 アルディをはじめとするラミドゥス猿人が二足歩行で動き回るようになったのは、人類の進化過程で起こった画期的な出来事と関係があるかもしれない。人類が交尾の相手を特定の1人に限ったことである。少なくとも、研究に参加したケント州立大学のオーウェン・ラブジョイ氏はそのように考えている。Center illustration (Ardipithecus ramidus) courtesy J. H. Matternes via Science/AAAS; left-hand and right-hand illustrations by National Geographic magazine staff [ 拡大 ]

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 人類最古の全身骨格化石がエチオピアで発見された。研究論文が10月1日発行の「Science」誌で発表され、大きな話題となっている。“アルディ”と名付けられたこの化石は440万年前に生きていたとみられるラミドゥス猿人(アルディピテクス・ラミドゥス)のメスで、脳は小さく体重は50キロほどだ。35年前には同じ発掘場所からアウストラロピテクスの貴重な化石として知られる“ルーシー”の骨格化石も発見されているが、“アルディ”はそれよりさらに100万年以上さかのぼるものだ。

 論文ではラミドゥス猿人の配偶関係についても触れられており、興味深い内容となっている。なぜヒトのメスは繁殖可能だというサイン(排卵期)が自らわからないのか。人間の男性とチンパンジーのオスの間で睾丸やペニスの大きさ、形状に大きな違いがあるのはなぜか。それらの理由に興味がある場合は一読に値するだろう。

 ルーシーや現生人類をはじめとするすべてのヒト科動物は、直立二足歩行を特徴としている。アルディも地上を歩くときは二足歩行だったが、基本的には樹上で生活し、四本足で木をよじ登っていたと考えられるため、詳しく調べれば類人猿からヒトへの進化過程を垣間見ることができる。

 ただし問題もある。従来の通説とは時間と場所が食い違っているのだ。これまで人類の二足歩行は、森を出て見通しのきくサバンナへ生活の場を移したときに始まったと考えられていた。しかしアルディが生きていた時代、エチオピアは森林地帯であり、砂漠化している現在よりはるかに寒冷、湿潤な気候だったのである。

 なぜアルディをはじめとするラミドゥス猿人は樹上生活を続けていたにもかかわらず、二足歩行を始めたのだろうか。四足歩行の方が移動手段としてはるかに効率的である点も、この問題の謎を深めている。

 アメリカ、オハイオ州にあるケント州立大学のオーウェン・ラブジョイ氏によると、謎を解くカギはエサと交尾にあるという。

 現生する類人猿のオスは、繁殖期になるとほかのオスと戦って排卵期のメスを奪い合う。ラミドゥス猿人の古代の祖先も同じ行動をとっていたと予測できる。その場合、勝者となって排卵期を迎えたメスとできるだけ多く交尾し子孫を増やせるのは、鋭く尖った大きな犬歯を持つたくましいオスである。また、多くのメスと交わるためにも交尾時間は短いほど有利だ。つまり射精しやすい構造のペニスと、大量の精子を貯蔵できる大きな睾丸が必須となる。一方、メスの勝者は、生殖器を大きく膨らませて繁殖可能であることを効果的にアピールできる個体である。有力なオスの気を引きうまく交尾できれば、生まれた子も優れた遺伝子を持つことになる。

 では犬歯が貧弱な劣勢のオスたちはどうしていたのだろうか。彼らは、エサをプレゼントすることで排卵期のメスを誘惑していたのかもしれない。現生のチンパンジーでも同様の行為が観察されることがあり、サルの仲間であるコロブスの肉をオスが差し出し、その見返りとしてメスが交尾に応じる場合がある。

 ラミドゥス猿人の祖先の間でも、エサ探しに危険や手間が伴う場合はこのような戦略が定着していた可能性がある。二足歩行で行動すれば手を自由に使って多くの果実やイモ類を持ち帰ることが可能となり、はるかに多くのプレゼントをメスに捧げることができたはずだ。メスの方も犬歯が小さくても安定的にエサを運んでくれるオスを好むようになっただろう。鋭く大きな犬歯を持つオスは、繁殖可能な別のメスが見つかればさっさと去ってしまうからだ。だが、果たしてこのような推測は成り立つのだろうか。前出のラブジョイ氏は、「ラミドゥス猿人の骨格を見れば明白だ。彼らはオスでも犬歯が小さく、二足歩行で動き回っていた」と話している。

 安定的にエサを調達できる二足歩行が有利だったということだが、さらに同氏は、これが一夫一婦制が広まった起源と考えている。進化上の革新的な出来事とも言えるこのような社会構造が、ヒトの最初期の祖先が誕生したおよそ600万年前から数えて、かなり早い段階で現れていたと言うのだ。

 メスが自らの排卵期を知っていたなら、普段はエサを提供する劣勢のオスを欺いて、排卵期に行う交尾は優勢なオスを選ぶことが可能になる。

 この乱婚的な関係は、ラブジョイ氏が言うところの「最もユニークなヒトの特徴」によって変化した。つまり、ヒトは発情期のサインを出さなくなったためオスは外見から判断できなくなり、メス自身にも予測ができないため、交尾とエサの提供の1対1関係が成立するようになった。

 定期的なエサのプレゼント、一夫一婦の落ち着いた関係、われわれの祖先がこれほど穏やかな性質だったとはいったい誰が想像しただろう。

Jamie Shreeve Science editor, National Geographic magazine

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