新型インフル感染率、先住民は5倍
2009年10月13日(火)14時21分配信 ナショナルジオグラフィック
外部と接触したことがないとされる先住民たち。2008年5月、ブラジルとペルーの国境付近で撮影された航空写真で明らかになった。 先住民族全体での新型インフルエンザ(H1N1)感染率は他の人々の4〜5倍に及んでいることを、先住民権利団体が2009年9月に発表した。Photograph by Gleison Miranda, Funai/AP [ 拡大 ]
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2009年10月9日、アメリカ政府は新型インフルエンザ(H1N1型)で死亡する子供の数が国内で急増していると発表し、またたく間に多数のインターネットサイトのヘッドラインを飾った。その一方で、先住民の新型インフルエンザ感染率はそれ以外の人々の4〜5倍に上ることが最近の調査報告で明らかになった。
世界各地の先住民族、すなわち自分たちの文化の発祥地に現在も暮している部族などの集団は、新型インフルエンザのパンデミック(世界的な感染拡大)で最大の危険に直面していると先住民権利団体は話している。
現在世界中に拡大しているH1N1ウイルスは季節性インフルエンザと同程度の危険性しかないことが既にわかっているが、いくつかの要因によって先住民はこのウイルスに対して他の人々よりも脆弱なのである。その要因のひとつは、先住民の免疫系が外からの細菌に対して特に弱いことにあるという。
ロンドンに本拠を置く先住民族文化の擁護団体サバイバルインターナショナルのディレクター、スティーブン・コリー氏は、「周囲から隔絶された人々は外部の病気に対する免疫をほとんど持っていない。従って、新型インフルエンザに感染した部外者に接触すればその部族に災いをもたらす可能性がある」と語る。
さらに、2009年9月末に発表されたサバイバルインターナショナルの報告書によれば、先住民族は生活水準が比較的低いため、教育、公衆衛生、インフラストラクチャの面で立ち後れており、先住民族の共同体の多くは生活が貧しく、衛生状態が悪く、過密状態で暮らしているという。
新型インフルエンザのほかにも、外来病はこれまでに数多くの先住民族の文化を滅ぼしてきた。15世紀にヨーロッパから南北アメリカ大陸に持ち込まれた麻疹(はしか)と天然痘は多数の先住民族の人口を壊滅的に減少させた。また、2008年に「Emerging Infectious Diseases」誌に発表された研究によると、1918年のスペインかぜの大流行では、先住民の間での拡大が特に顕著だった。
この研究では、カナダ、スウェーデン、ノルウェー、アメリカの先住民の死亡率は先住民以外の人々の3〜70倍高かったと推定されている。
先頃、カナダのマニトバ州で新型インフルエンザの感染率が急上昇したため、同州の先住民グループ、マニトバ・ファーストネーションズは衛生緊急事態を宣言するに至った。サバイバルインターナショナルによると、カナダ政府は遺体収納袋や手洗い用殺菌剤、マスクなどの医療用品をマニトバ州に送っている。
ファーストネーションズの人々はマニトバ州の人口の10パーセントを占めるにすぎないが、マニトバ族長会議(Assembly of Manitoba Chiefs)議長のロン・エバンス氏によると、これまでマニトバ州で報告されている新型インフルエンザの感染例のうちおよそ3分の1から半数をファーストネーションズの人々が占めているという。マニトバ州では少なくとも6人が新型インフルエンザで死亡したとCBCニュースは伝えている。
先日カナダ連邦議会で証言したエバンス氏は、新型インフルエンザ拡大の要因として公衆衛生サービスが行き届いていないことと人口密度の高さを強調している。「このような基本問題を解決しなければならない」とエバンス氏は言う。
オーストラリアでも、アボリジニとトレス海峡諸島民は全人口の2.5パーセントを占めているにすぎないにもかかわらず、新型インフルエンザで入院および死亡した人のうち10パーセントを占めている。
また、オーストラリアのアボリジニの人々は様々な慢性疾患を潜在的に抱えており、そのなかには十分な診察がなされていないものもあるため、特に脆弱であるとも報告されている。
カリフォルニア州に本拠を置く人権団体アマゾン・ウォッチのアトッサ・ソルタニ氏によると、ペルーのアマゾン奥地では周囲から隔絶された先住民が、外国から来た石油会社の従業員が持ち込む新たな細菌の脅威にさらされることが増えているという。
ペルーでは、石油会社は従業員と先住民との接触に関するガイドラインを策定することが法律で義務付けられている。
マチゲンガ族の大規模な連合体COMARU(Consejo Machiguenga del Rio Urubamba)に電話で取材したところ、ペルー南東部の部族であるマチゲンガ族のうち、ティンピア(Timpia)という密林の共同体で既に7人が新型インフルエンザに感染したという。取材に応じたのは正規の報道担当者ではなかったが、死者は出ていないと話している。
COMARUとアマゾン・ウォッチはともに、熱帯雨林の奥地にある先住民族の居住地近くで活動する際には注意するよう石油会社に指示することを、長年に渡りペルー政府に対して求めている。
Kelly Hearn for National Geographic News
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