太陽系外縁部に謎の“リボン”を発見
2009年10月16日(金)17時55分配信 ナショナルジオグラフィック
NASAの人工衛星IBEX の観測データを基に、史上初となる太陽系外縁部の全天地図が作成され、未知の“リボン”状の天文現象が確認された。リボンの構成要素は非荷電原子のENA(エネルギー中性原子)で、長さは約30億キロだという。 2009年10月に発表された研究によると、この宇宙リボンの存在する領域では、太陽系の保護シールド“太陽圏”が天の川銀河の磁場から圧迫を受けている可能性があるという。Picture courtesy Southwest Research Institute [ 拡大 ]
-PR-
太陽系は太陽圏(ヘリオスフィア)という泡のようなシールドに包まれており、外宇宙から注ぐ宇宙線の流入が抑えられている。
今回発見された細長い宇宙リボンは、このシールド内壁に“くの字”形で張り付くように存在している。1977年にNASAが打ち上げた双子の宇宙探査機ボイジャー1号と2号はそれぞれ2004年と2007年に太陽系外縁部の探査を開始したが、現在はこのリボンを挟み込むような位置で観測を続けている。
外縁部の特定領域が観測対象のボイジャーのデータからは宇宙リボンの存在を確認できなかったが、視野の広いNASAの太陽圏観測衛星IBEX(Interstellar Boundary Explorer)の観測データにはその存在がとらえられていた。IBEXは太陽系外縁部の地図を作成する目的で2008年10月に打ち上げられ、現在は地球の周回軌道上で観測を行っている。
NASAゴダード宇宙飛行センターに所属するIBEXミッションのスタッフ、エリック・クリスチャン氏は、10月15日午後の記者会見で次のように話している。「ボイジャーは気象観測所、IBEXは気象衛星に例えることができる。観測所2カ所のデータだけでは地球全体の天気はわからないが、衛星なら全体を把握できる。IBEXが宇宙リボンを確認できたのも同じ理屈だ」。
IBEXの観測データを基にした地図によると、宇宙リボンの全長は約30億キロ、幅は数十万キロに広がっている。
テキサス州にあるサウスウエスト研究所の職員で、IBEXミッションの主任研究員も務めているデイビッド・マコーマス氏は、ナショナルジオグラフィック ニュースの取材に対し次のようにコメントしている。「宇宙リボンは肉眼では見えないし、宇宙探査機が通過しても機体や人体に害はない」。
宇宙リボンの形成過程はまだ明らかになっていないが、天の川銀河の磁場が太陽圏の外層を圧迫して形成された可能性がある。
太陽風が形成する太陽圏の外縁部ではENA(エネルギー中性原子)という非荷電原子が生成されおり、約1年前の打ち上げ以来、IBEXが検出を続けている。
太陽から全方向に噴き出している荷電粒子の流れが太陽風で、太陽圏とはこの太陽風が届く範囲のことを言う。太陽圏の外側を漂う星間ガスの一部は絶えずゆっくりと内部へ流れ込んでおり、高速で移動する太陽風と衝突するとENAが生成される。
ENAの一部は生成の瞬間に地球へ向かってはじき飛ばされ、IBEX搭載のセンサーによって検出される。マコーマス氏によると、地図作りに要した6カ月の観測期間で約100万個のENAを検出したという。
同氏は宇宙リボンの発見に基づき、「太陽圏外縁部の一部の領域では、ENAがより高密度で生成されている部分がある」と考えるようになったが、局所的な増加の理由は不明である。1つの可能性として、「ENAは、天の川銀河の磁場が太陽圏の外層を圧迫している領域でより多く生成されるのではないか」という見方がある。
マコーマス氏の見解は次のようなものだ。「リボンは太陽圏外縁部で磁場の影響が最も強い領域に存在している。もちろん偶然ということも考えられるが、外部の磁場が太陽圏を通して影響を与えている可能性も十分に考えられる」。
IBEXミッションの研究チームは現在、新たな観測データに基づいて太陽圏の2つ目の全天地図を作成中だが、完成前の段階で既にリボンの形状に変化の兆候が見られるという。「少しばかり変化しているようだ。最初の地図作成から6カ月が経過する間に進化したのかもしれない」とマコーマス氏はコメントしている。
この研究は今週発行の「Science」誌に掲載されている。
Ker Than for National Geographic News
「木星」について詳しくはこちら »
■ 関連コンテンツ
・太陽圏縮小の恐れ
・太陽の活動低下、地球への影響は?
・宇宙全域のガンマ線地図が明らかに
・ボイジャーとカッシーニ:太陽系の果てへの旅 (動画)
・太陽系 (写真集)
ナショナルジオグラフィック 科学&宇宙最新ニュースはこちら »