アメリカ初の津波シェルター建設計画
2009年10月26日(月)15時29分配信 ナショナルジオグラフィック
大地震による津波の脅威がアメリカ北西部の太平洋沿岸で高まる中、オレゴン州のキャノンビーチがアメリカ初の津波シェルター建設を計画していることが、2009年10月に発表された。上は2008年作成の新市庁舎の完成予想図。Photograph courtesy Yumei Wang, Oregon Department of Geology and Mineral Industries [ 拡大 ]
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オレゴン州ポートランドで10月18日から21日にかけて開催されたアメリカ地質学会の年次総会で行われた発表によると、キャノンビーチでは、200万ドル(約1億8000万円)をかけて建築された現在の市庁舎を、さらに200万ドルかけて改築し、津波シェルターとして使えるようにする予定だという。新しい市庁舎の設計には、この地域で予想される災害に対する対策が盛り込まれることになる。
アメリカ北西部の太平洋沿岸は、世界で最も地震と津波の危険性が高い地域のひとつで、マグニチュード9の規模の地震が発生する可能性もあるとされる。もしそのような地震が起きると、数分以内に高さ15メートルに及ぶ津波が沿岸の町に押し寄せ、死者が多数発生するだろう。
このような大地震がいつ発生するかは予測不可能だ。数百年先かもしれないが、明日発生してもおかしくない。大地震を引き起こすと考えられているのは、カスカディア沈み込み帯と呼ばれる断層帯である。2004年末にインド洋で地震と津波を引き起し多数の死者を出した断層帯と非常によく似ていることが、これまでの研究でわかっている。
オレゴン州地質鉱物産業局ポートランド分室の地質工学エンジニア、ユーメイ・ワン氏は、町が津波に襲われた際の住民の生存率を高める方法として、危険性が最も高いと予想される地域に、津波から身を守るためのシェルターを建設することを挙げる。
こうした津波シェルターは通常、頑丈な支柱の上に建てられる高床式の建物で、津波のエネルギーを分散させるための堤防や護岸堤を備えている。また、避難してきた人たちが建物に素早く入れるように、入り口にはスロープを設ける必要がある。一般的な建物は、中にいる人が外に出やすいように設計されるが、「シェルターの場合は、建物の中に人が入りやすいようにしたい」とワン氏は語る。
津波シェルターは日本には既にあるが、アメリカで津波シェルターの具体的な建設計画を進めているのは、人口1700人のキャノン・ビーチが初めてである。ワン氏によると、新しい市庁舎は3年後に完成する予定で、平らな屋根の上に1000〜2000人が避難できるものになるという。
オレゴン州立大学海洋研究助成プログラムの災害支援専門家パトリック・コーコラン氏は、このアイデアに全面的には賛成していない。「技術的には良い方向に進んでいると思う」とする一方で、防災訓練が不可欠だとも指摘する。アメリカ北西部の太平洋岸では、地質調査はかなり進んでいるのに対し、災害対策が立ち遅れているとコーコラン氏は警告する。「自然現象の解明に夢中になるだけでなく、その知見を日常生活に応用しなければならない」。
アメリカ地質調査所西部地理研究センターの地理学者ネイサン・ウッド氏も同じ意見だ。ウッド氏は、危険性の高い地域を特定し、その地域の住民に高い場所に避難するよう指示するだけでは不十分だと主張する。「立派な施設を建てて終わりというやり方は、アメリカンフットボールに例えるなら、パスを投げるクオーターバックにばかり大金をつぎ込んで、パスを受けるレシーバーのことはほったらかしにするようなものだ。津波から避難する人の中には、5歳の子どももいれば退職した老人もいるだろう。もしかしたら、遠くアイオワから引っ越してきたばかりの人かもしれない」。
Richard A. Lovett for National Geographic News
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