ヤンガードリアス期、彗星原因説に異論
2009年10月26日(月)17時44分配信 ナショナルジオグラフィック
北アメリカの五大湖を写した航空写真(2002年5月4日撮影)。五大湖は何百万年もかけて氷河が前進と後退を繰り返して形成された。今から約1万2900年前にはヤンガードリアス期と呼ぶ短い寒冷期が起こっている。 だが、ヤンガードリアス期が始まった原因についてはまだ結論が出ていない。巨大な彗星が落下して地球が寒冷化し、当時北アメリカに生息していたほとんどの動物が絶滅したとする“彗星説”が2007年に発表されたが、2009年10月に発表された最新の研究により、その信憑性が希薄になった。Photograph courtesy Jacques Descloitres, MODIS Land Rapid Response Team, NASA/GSFC [ 拡大 ]
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ヤンガードリアス期の存在自体は疑う余地がないが、この急激な気候変動の原因を彗星の衝突に求める説については反論が続出していた。
2007年の彗星衝突説では、北アメリカに生息していたサーベルタイガーやマストドンなど大型動物の絶滅も衝突による寒冷化や野火が原因であり、北アメリカの初期文明であるクロービス文化が衰退したのも同様の可能性があるとされている。この学説は、北アメリカ全土に薄く広がっている堆積層から発見された考古学的な証拠と、同じ層の土壌サンプルから検出された地球外に起源を持つ磁性粒子に基づいて唱えられた。
また、カリフォルニア州にあるローレンス・バークレー国立研究所の核化学者リチャード・ファイアストーン氏が率いた当時の研究チームは、彗星衝突の際に生じた猛火が残した木炭や極小の炭素の痕跡も発見している。しかし、オレゴン州ポートランドで2009年10月に開催されたアメリカ地質学会(GSA)の会合で、これらすべての“証拠”に異議を唱える最新の研究が発表された。
南イリノイ大学の地質学者ニコラス・ピンター氏の反論は次のようなものだ。「2007年の研究で木炭とされた黒い物質だが、実際は古代の湿地帯で形成された黒い土壌の一部であり、それを木炭と勘違いしたようだ。また微量の炭素も、猛火と必ずしも結び付くものではない。ただし磁性粒子に関しては、地球外からやってきたと見て間違いはないだろう。しかしその起源はファイアストーン氏が指摘したような彗星ではなく、地球に毎年3万トンも落下する小隕石がもたらした可能性が高い。この磁性粒子は、年代の異なるほかの多くの地層にも同程度以上の濃度で含有されている」。
アリゾナ大学の考古学者ヴァンス・ホリデー氏も、「クロービス文化が彗星の衝突で消滅したという証拠は見つかっていない」と表明している。ファイアストーン氏らは、ヤンガードリアス期前後で地層から発見される槍の穂先の形状が変化していることを根拠に、クロービス文化が途絶えて別の文化が始まったと考えている。
しかしホリデー氏は、戦後の乗用車で流行し、その後衰退した“テールフィン”というデザインを引き合いに出し、槍の先端の形状変化も流行に基づく通常の進化であると指摘している。「様式変化の考古学的な意味合いは正確にはわからないが、どんな文化にも流行や廃りはあるものだ。考古学上の謎を無理矢理作り出し、その答えを地球外に求めても意味はない」。
ただ、反論が続出しているとは言え、彗星説の提唱者ファイアストーン氏は自説を曲げていない。
同氏は電子メールでの取材に対し、次のように回答している。「クロービス文化が消滅した明白な証拠はないが、彗星衝突を境に地層から出土する槍の穂先の数が激減していることは間違いない。また、クロービス文化と次に興ったフォルサム文化の間には、100年以上の隔たりがあるとする研究も発表されている」。
同氏はオーストラリアの科学誌「Cosmos Magazine」でこうも語っている。「彗星衝突時に形成された地層は非常に薄いため、土壌サンプルに上下の別の地層の土が混入しやすく、その存在が見過ごされやすい。また、南イリノイ大学のピンター氏は木炭と炭素についても誤解しているようだ。これらの物質は土壌そのもののように広範囲に存在するものではなく、ごく一部の堆積物の中にしか見つからない。さらにもう一つ、同氏は磁性粒子の起源を小隕石としているが、われわれのサンプルの組成は小隕石とは異なっている」。
Richard A. Lovett for National Geographic News
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